何を選べばいいか迷ったらこの2台

ゲームは“音”で変わる! HyperXの万能ヘッドセット&定番マイクが「体験を引き上げる」

山本竜也

「HyperX QuadCast 2 S」(左)と「Cloud III S Wireless」(右)

ゲーム環境を見直すとき、ディスプレイやPC性能をつい優先してしまう。しかし、実際にプレイ体験へ与える影響という意味では、音も同じくらい重要だろう。

特にFPSやアクションゲームでは、音の定位感や環境音の再現度が没入感に直結しやすい。一方で、実況や配信、あるいは友人とのボイスチャットを交えたプレイでは、自分の声をどれだけクリアに届けられるかも無視できない要素になる。

いまやPCだけでなく、PS5やNintendo Switch 2、スマートフォンなど、複数のデバイスをまたいでゲームを楽しむことも珍しくない。そうした環境では、映像や処理性能だけでなく、「聴く」と「伝える」をどう整えるかでも快適さは変わってくるはずだ。

今回は、HPのゲーミングブランド「HyperX」から、ワイヤレスゲーミングヘッドセット「HyperX Cloud III S Wireless」(直販価格:2万2980円・税込)と、USBコンデンサーマイク「HyperX QuadCast 2 S」(同3万2000円)の2製品を試した。

HyperXは国内でもマイクやヘッドセットのカテゴリーで高い存在感を持つブランドであり、HPブランドならではのサポート体制も安心感につながっている。単体での完成度を見つつ、2台を組み合わせたときにゲーム体験がどう変わるのかも含めてレポートしたい。

ゲーム以外でも快適な万能ヘッドセット「Cloud III S Wireless」

HyperX Cloud III S Wirelessはオーバーイヤー型のヘッドセットで、左側ユニットに着脱式のブームマイクを備える。デザインとしてはオーソドックスだが、本体にもマイクを内蔵しており、ブームマイクを外した状態でもマイクを利用できる。

ブームマイクを装着した状態。左ユニットへの着脱式で、外すと内蔵マイクが自動で有効になる

レザーレット(合皮)製カバーに覆われた低反発クッションのイヤーパッドは適度な厚みがあり、装着感は良好だ。ヘッドバンドにも柔軟性があり、頭の形に沿って自然にフィットする。ゲームでは1〜2時間以上連続して使うことも珍しくないだけに、耳への圧迫感や頭頂部への負荷が少ない点は重要だろう。

一方で、長時間使っていると耳周辺に熱がこもりやすい。密閉型ヘッドセットでは珍しくない傾向だが、本機でもその点は意識しておきたい。

イヤーパッドは引っ張るだけで取り外せる。汗や劣化に備えて交換できる構造はありがたい

なお、イヤーパッドは取り外しが可能だ。ヘッドセットでは汗などの影響を受けやすく、比較的劣化しやすい部分でもあるため、交換できる構造は長く使う上ではありがたい配慮だ。

項目仕様
ドライバー53mm
接続方式2.4GHz ワイヤレス / Bluetooth 5.0(SBC、AAC)
バッテリー最大120時間(2.4GHz)/ 最大200時間(Bluetooth)
マイク着脱式ブームマイク(10mm)+本体内蔵マイク×2
空間オーディオDTS Headphone:X
価格2万2980円(直販)

ゲームでの音響体験

53mmの角度付きドライバーは、音の定位感を意識した設計とのことだ。実際、FPSのように足音や銃声の方向を把握したい場面では、空間オーディオ(DTS Headphone:X)を有効にすることで、音の位置関係を掴みやすくなる印象がある。オフにした場合は、比較的素直なステレオサウンドとして使える。

空間オーディオの設定には「EXPERIENCE」と「DISTANCE」の2つが用意され、EXPERIENCEは「Performance」「Balanced」「Immersion」の3つで調整できる。

Performance側に設定すると、音の方向性や定位感を高められる、FPSゲームなどに向いた設定だ。反対にImmersionでは音の厚みが増して臨場感を得られる。RPGなどのストーリー性を重視するゲームや映画などに向いている。

NGENUITY betaアプリの空間オーディオ設定画面。EXPERIENCEとDISTANCEをスライダーで調整できる

DISTANCEは、サウンドが再生される位置を遠くしたり近づけたりする調整項目だ。プリセット的な分かりやすさはないが、自分の好みに合わせて追い込める余地はある。

低音の量感は、イコライザー未設定・空間オーディオをPerformanceに設定した状態ではフラットな傾向だが、ゲーム用途では爆発音や打撃音の低音は十分に出る。音楽用途でも使えなくはないが、全体としてはゲーム向けのバランスに寄せた音作りという印象だ。

なお、Immersionに設定すると、低音をより強く感じ、音楽を聴くならこちらの設定のほうが向いている。

2.4GHz/Bluetoothの使い分け

接続は、専用のUSBドングルを用いた2.4GHzワイヤレスとBluetoothの両方に対応する。PCやPS5、Nintendo Switch 2といったゲーム機では2.4GHz接続、外出先ではスマートフォンとBluetooth接続に切り替えて通話や音楽視聴に使うといった使い分けもしやすい。

ブームマイクを外せば見た目も比較的すっきりし、ヘッドホンとしても扱いやすい。一台でゲームとライフスタイルをカバーできる汎用性が魅力だ。

右ユニットには音量・接続切替ボタンを配置。付属のUSBドングルはUSB-C to Aアダプター付き

なお、Nintendo Switch 2は、公式には謳われていないものの利用可能だった。USBドングルを本体に直接挿すと出っ張ってしまうが、ドックに接続してTVモードで使うなら全く気にならないだろう。

Nintendo Switch 2でも問題なく利用できた

バッテリー持続時間は2.4GHz接続で最大120時間、Bluetooth接続で最大200時間とされている。実際の使用条件によって前後はするが、頻繁に充電を意識しなくてもよい水準で、実用性は高いといえる。

とはいえ、満充電には5時間かかり、急速充電には対応していない。使おうと思ったら充電切れだった、ということを避けるには、こまめに充電する習慣は持っておいた方がよさそうだ。

1つ注意したいのが、Bluetooth接続時はNGENUITYアプリがヘッドセットを認識しない点だ。イコライザーやマイク設定を行うには2.4GHz接続が必要で、Bluetooth接続時は、基本的に素の状態の音で使うことになる。

USBで繋ぐだけ、“声”を整えるマイクQuadCast 2 S

HyperX QuadCast 2 Sは、ゲーム実況や配信を主用途とするUSBコンデンサーマイクだ。QuadCastシリーズは、そのルックスも含めてHyperXの定番マイクとして知られており、本機はその最新世代にあたる。

QuadCast 2 SのARGBライティングは108か所。ライティングのカスタマイズはNGENUITY betaアプリから行う

QuadCast 2 Sはショックマウントを備えたスタンドが付属しており、箱から出して机に置き、USBケーブルでPCと接続すればすぐに使い始められる。

スタンドから外してマイクアームへ取り付けることも可能で、3/8インチと5/8インチのネジに対応する。アームを使えば自由度は上がるが、付属スタンドのままでも机の上に置くだけで十分使える。ポップフィルターも内蔵しているので、最初から大がかりな環境を前提にしなくてよいのもポイントだ。

スタンドからマイクを取り外した状態。底部のネジはマイクアームの標準規格(3/8・5/8インチ)に対応する

本体は14mmエレクトレットコンデンサーカプセルを3基搭載し、最大192kHz/32bitの録音に対応する。指向特性はカーディオイド、オムニ、ステレオ、双指向性の4種類を切り替えられる。1人で話すなら、基本はカーディオイド(単一指向性)での利用になりそうだ。

ゲーム用途では、ヘッドセット付属のマイクで十分と感じる人も多いだろう。ただ、マイクを独立させることで、ヘッドセットには音の聴きやすさを、マイクには声の拾いやすさをそれぞれ求めやすくなる。

実況や配信だけでなく、ボイスチャット時の音声環境を少し整えたい場合にも分かりやすい選択肢だ。

項目仕様
変換素子14mm エレクトレットコンデンサーカプセル × 3
サンプリングレート最大32bit / 192kHz
指向特性カーディオイド、オムニ、ステレオ、双指向性
接続USB(USB-C)
ライティングARGB(108か所)
モニター出力3.5mmジャック
価格3万2000円(直販)

多機能ノブの実際の使い心地

QuadCast 2 Sの操作系の中心は、本体前面に設置された多機能ノブ(マルチファンクションロータリーノブ)だ。

このノブを短押しするたびに「マイクゲイン調整」→「ヘッドホン音量調整」→「モニターミックス調整」と機能が切り替わり、回転でそれぞれの値を変えられる。長押しで指向特性を切り替えることもできる。

なお、「ヘッドホン音量調整」と「モニターミックス調整」は、マイク背面のオーディオジャックに有線でイヤホンやヘッドホンを接続している場合のみ利用可能だ。

本体前面の多機能ノブ。LEDインジケーターの色で現在の操作モード(ゲイン/音量/ミックス)を確認できる

機能が1つにまとまっているのは分かりやすい反面、現在どのモードを操作しているのかは主にLEDの色で判断する必要がある。ただ、日常的に頻繁に触るのは主にゲイン調整くらい。そもそも背面にヘッドホンを接続しなければ、他のメニューは選べないので迷うことも少ない。

上部のタップ操作によるミュートは反応も安定しており、とっさにミュートしたい場面でも扱いやすかった。

USBマイクとして十分に高い音質、声の輪郭も捉えやすい

実際に試した範囲では、QuadCast 2 Sは声の輪郭を比較的はっきり捉える傾向があるように感じた。ヘッドセットのブームマイクに比べると、少し離れた位置から話しても比較的クリアに聞こえる。扱いやすいUSBマイクで、ゲーム用途に限らず、オンライン会議や日常的な通話などにも使いやすい。

カーディオイドでは正面の音を中心に拾うため、1人で話す用途と相性がよい。PCの冷却ファンや室内の環境音を完全に消せるわけではないが、周囲の音を無差別に拾ってしまうこともなく、用途に応じた調整がしやすかった。

マイク設定画面ではゲイン調整、指向特性の切り替えなどをまとめて管理できる

ショックマウントを備えているため、机の振動をある程度抑えられる点も使いやすい。ただし、キーボードの打鍵音や机に物を置いたときの衝撃のような物理的ノイズは完全には避けられない。本体だけでも十分に使えるが、そうしたノイズをさらに抑えたい場合や、より本格的な配信環境にしたい場合は、マイクアームの利用も将来的な選択肢の一つだろう。

2つの製品を組み合わせて「聴く」と「話す」を整える

Cloud III S WirelessとQuadCast 2 Sを組み合わせるメリットは、「聴く」と「話す」を別々に整えられることだ。Cloud III S Wirelessでゲーム音を快適に聴き、QuadCast 2 Sで声を安定して入力するというように、それぞれの役割が明確になる。

ヘッドセットのブームマイクだけで完結する構成より手軽さはないが、そのぶん音の聴きやすさと音声入力のしやすさを分けて考えやすい。実況や配信だけでなく、ボイスチャット時の音声環境にも気を配りたいなら、分かりやすい組み合わせといえるだろう。

また、この構成はゲーム専用に閉じたものでもない。Cloud III S WirelessはBluetooth対応で外でも利用しやすく、QuadCast 2 Sはオンライン会議や通話にも使える。ゲーム環境を整えることが、そのまま日常のデスク環境の快適さにもつながるのは、独立したマイクとワイヤレスヘッドセットを組み合わせる利点の1つだ。

どちらもブラック・ホワイトのカラーバリエーションが用意されており、デスクのセットアップを統一感ある見た目にまとめる楽しさもある。単なる周辺機器の寄せ集めではなく、ひとつの環境として組みやすいのもこの組み合わせのよさだ。

実際の使用環境例。マイクとヘッドセットをデスクに組み込むことで、ゲームもリモートワークもカバーできる環境が整う

まとめ

HyperX Cloud III S Wirelessは、2.4GHz/Bluetoothの両接続に対応し、120〜200時間という長いバッテリー持続時間を持つワイヤレスヘッドセットだ。ゲーム向けの音響としてはバランスが取れており、快適に長時間使えるレベルの装着感を備えている。接続の柔軟性という面では、PCゲームだけでなくスマートフォン用途でも普段使いしやすい。

HyperX QuadCast 2 Sは、192kHz/32bitという高サンプリングレートのUSBコンデンサーマイクで、実況・配信用途をメインターゲットにしながら、日常的なビデオ通話やポッドキャスト収録にも使える汎用性がある。多機能ノブによる一括操作は慣れると便利で、設置の手軽さも含めて実用的な製品だ。

2製品を合わせると5万円を超える投資にはなるが、ゲーム体験全体のオーディオ環境を整えるという観点では、それぞれの役割は明確で、組み合わせる意味も見えやすい。

国内でも高いシェアを持つHyperXのラインナップは、HPブランドのサポートを背景に初心者からベテランまで幅広い層に支持されており、「何を選べばいいか迷ったらこの2台」と言えるだけの信頼感がある。ゲームのオーディオ環境を一段階引き上げたいユーザーにとって、有力な選択肢になるだろう。

関連キーワード: