他のサードパーティAIも選べるかも

iOS 19にGoogleのAI「Gemini」統合か。ピチャイCEOが言及

多根清史

Image:Koshiro K/Shutterstock.com

アップルが今年秋にリリース予定のiOS 19に、Googleの生成AI「Gemini」が標準統合される可能性が高いことを、Googleのサンダー・ピチャイCEOが示唆したと報じられている。

米司法省による反トラスト訴訟の証言の中で、ピチャイ氏は自社のAIサービス「Gemini」が、今年中にアップル製品の追加AIオプションとして組み込まれることに期待を示したとBloombergが伝えている。2024年を通じて、アップルのティム・クックCEOと複数回にわたって会談しており、「今年半ばまでに合意に至ることを目指している」とも明かしたという。

この「今年半ばまでに合意」というタイミングは、偶然とは言いがたい。なぜなら、アップルは6月9日のWWDC基調講演にて、iOS 19を含む次期主要OSのアップデート内容を発表する予定だからである。Googleとの提携がまとまれば、WWDCで発表するには格好の題材となる。

昨年のWWDCでは、アップルは独自AI「Apple Intelligence」を初めて公開し、OpenAIとの提携やChatGPTのiOS 18統合を発表していた。今年のWWDCでは、これに続くかたちでGoogleとの提携、すなわちGeminiのiOS 19への統合が発表されるのは理にかなっている。

実際、アップルとGoogleがiPhoneにGeminiを搭載する方向で協議していることは、すでに1年以上前から報じられており、今回の動きは特に意外なものではない。

さらにThe Vergeは、ピチャイ氏が「クック氏から、今年後半にはさらに多くのサードパーティAIモデルがApple Intelligenceに追加される予定だと聞いた」とも述べたと報じている。これは、アップルがOpenAIやGoogleに加え、他の生成AIベンダーとも提携を進めているか、すでに契約を結んでいる可能性があることを意味している。

もしiOS 19にGeminiをはじめとする複数のAIモデルが統合されれば、ChatGPTに対する拡張機能に似た形式で、用途に応じたAIを選んでSiriに指示できる可能性がある。たとえば、「Siri、Geminiに聞いて」などの音声コマンドによって、複数のAIモデルを使い分けるシーンが想定される。

iOSに他社の生成AIを組み込むことは、ユーザーにとって選択肢の幅が広がるだけでなく、アップルにとっても大きなメリットがある。AIによって生成されるコンテンツがアップルの管轄外で処理されるため、正確性・倫理性・ハルシネーション(誤生成)などへの責任を一定程度回避できるからである。

もっとも、最終的なユーザー体験やプライバシー保護の責任はアップルにも残される。そのため、将来的には自社開発のAIによる置き換えを目指す可能性も十分に考えられる。

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