実際に稼げるのはOpenAIよりAzureだから?
マイクロソフト、OpenAIが非難したAIモデル「DeepSeek R1」のホスティング開始
ChatGPTのOpenAIは、DeepSeek R1開発元の中国企業が同社のAIモデルを規約違反の「蒸留」に使っていると非難していた。その直後、OpenAIの最大投資企業であるマイクロソフトがDeepSeek R1をAzureクラウドサービスでホストすると発表している。
DeepSeek R1は、OpenAIの「o1」に匹敵するパフォーマンスを持つといわれる推論AIであり、そのコストが10分の1以下だと主張したことが、高価なAIチップの供給元であるNVIDIAの株価を急落させていた。
マイクロソフトのコーポレートバイスプレジデントAsha Sharma氏は「R1は、より多くのユーザーが最小限のインフラ投資で最先端のAI能力を活用できる、強力かつ費用対効果の高いモデルを提供する」とニュースリリースで述べている。
まだAzureでの価格は確認できないが、R1はo1よりはるかに低いコストで実行できる。DeepSeekはR1の API コストが出力トークン100万個あたり2.19ドルと記載しているが、o1は100万トークンあたり60ドルである。
一見すると、R1をマイクロソフトのサーバーでホスティングする決定は、さほど違和感はない。同社はAzure AI Foundryサービスで1,800以上のAIモデルを提供しており、ソフトウェア開発者は様々なAIモデルを試用し、自社製品に統合できる。顧客がどのようなモデルを選ぼうと、自社のクラウドサービスで使われる以上、マイクロソフトにとっては利益となる。
しかし、一方ではOpenAIを揺るがせたAIモデルに正当性を与える動きでもある。OpenAIはDeepSeekが自社のAIモデルを使って出力(合成データ)を生成し、R1の訓練や微調整に使った疑いがあるという。この「蒸留」と呼ばれる行為は、利用規約に違反しているとの主張だ。
実際、DeepSeek V3(R1の前身となった大規模言語モデル)のリリース以来、このモデルが自らを「ChatGPT」と呼んでいるとの報告が相次いでおり、少なくとも一部のChatGPT生成データがV3の微調整に使われた可能性を示している。
ただし、AI企業がOpenAIのモデルを蒸留に使ったことは今回が初めてではない。2023年末にも、イーロン・マスク氏のxAIがGrok AIの訓練で同様のことをしたとの指摘があった。
さらにマイクロソフトのセキュリティ研究者も、中国の企業が2024年秋にOpenAIのAPIを通じて訓練のため大量のデータを抽出した可能性があると発見し、DeepSeekの調査を開始したとの報道もあった。
そんな騒動のなか、OpenAIのCEOであるサム・アルトマン氏はDeepSeekによる競争の激化を歓迎する姿勢を示している。「DeepSeekのR1は、特に価格に見合った機能を提供しているという点で、素晴らしいモデルだ。私たちは当然、より優れたモデルをお届けするだろう。新たな競争相手が現れることは、本当に刺激的だ!いくつかのリリースを発表する予定である」とのことだ。
その一方、マイクロソフトはCopilot+ PCでローカル実行できるDeepSeek R1をまもなく提供する予定である。同社としてはOpenAIに巨額の投資をしているが黒字化のめども立たず、実際に利益を出すのはAzureやWindows PCということかもしれない。
- Source: Microsoft
- via: Ars Technica