クックCEO「インテルはファウンドリーになる方法を知らない」

TSMC創業者、インテルがiPhoneチップ製造を受託できなかった理由を語る

Image:Laura Hutton/Shutterstock.com

今やTSMCはアップルの主要な製造パートナーであり、毎年何億台ものiPhoneやiPad、Mac用のチップを独占的に供給している。かつてインテルもiPhoneのチップ製造に参入しようとしたものの、破談に終ったことをTSMCの創業者モリス・チャン氏が語っている。

チャン氏はビジネス系ポッドキャスト「Acquired」の最新エピソードに出演し、TSMCの歴史と成功の秘けつについて深く掘り下げるインタビューを受けている。その中でも興味深いのは、アップルとのパートナーシップの歩みである。

全ての始まりは2010年、フォックスコン(鴻海)創業者のテリー・ゴウ氏がアップルのジェフ・ウィリアムズCOO(最高執行責任者)が連れてきたことだった。当時、TSMCは28nmプロセスノードの生産を始めたばかりだったが、アップルは20nmを要求し、それに無理して応えたところ16nmノードの開発が遅れてしまったという。

さらに2011年、インテルの幹部がティム・クック氏(同年にアップルCEOに就任)に接触し、iPhoneのチップ製造を任せるよう検討を求めたとのこと。そのため、アップルとTSMCの話し合いは2カ月間にわたり中断されたそうだ。

だが、チャン氏はさほど心配していなかったという。なぜなら「2011年当時、インテルという名前を聞いて立ち上がって頭を下げるような企業ではなかったから」とのこと。当時、同氏は自社の技術がインテルとほぼ同等で、製造能力はインテルより優れていると考えていたのだ。

その後、クック氏はアップル本社でチャン氏と昼食を共にして「インテルはファウンドリ(半導体受託製造企業)になる方法を知らないので、心配することはない」と告げたという。チャン氏はこの答えを「非常に簡潔だが、私にとっては非常に満足のいくものだった」と振り返っている。

またチャン氏は、アップルとの取引が始まる前からインテルの顧客を数多く知っていたが「彼らの誰もインテルが好きではなかった。インテルは常に、自分だけが唯一の存在であるかのように振る舞っていた」という。さらに、自分が知るインテルの顧客は誰もが「別のサプライヤーがあればいいのに」と思っていたとも付け加えている。

なぜクック氏が、インテルがファウンドリー事業に不向きだったかは明らかにされていないが、チャン氏は二つの要因を指摘。インテルが顧客の要求に柔軟に対応できないこと、そしてインテルが自社の製品設計と製造の両方を行うため、顧客との間に利益相反が生じる可能性があることだ。

この2つは、今なおインテルがファウンドリー事業に抱えているネックである。パット・ゲルシンガー元CEOは志半ばにして退任したが、同社がこの問題に今後どう取り組むのか見守りたいところだ。

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