「1万人を雇ってスマートスピーカーを作ったのではないか」との証言も

Amazon、Alexaガジェット事業で利益が出る見通しなし。4年間で250億ドルの赤字か

Image:Nick Bee/Shutterstock

米Amazonの音声アシスタント「Alexa」搭載ガジェット事業は真っ先に人員整理の対象となるなど、不調である兆しがたびたび伝えられてきた。

その赤字額は、2017年~2021年に合計250億ドルにも達していたとThe Wall Street Journalが報じている。

そもそもAlexa事業は当初から収益を上げるのに苦労し続けており、2022年だけで100億ドルの損失を出したとBusiness Insiderは報じていた

今回のWSJ報道は、250億ドルという数字は「内部文書」から得られたものだと主張。その前後での損失額は確定できなかったという。

なぜ、これほど長期間にわたって多額の赤字を垂れ流し続けられたのか。

1つは、イノベーションと長期的な利益が出る可能性から、財務的には多少の余裕が持たされていたという。元幹部の1人は、Alexaのスタート当初、ガジェット部門は「利益のタイムラインを持っていなかった」と述べている。

Alexaがショッピングなどに繋がり、そこから上がる利益を見越して、Echoスピーカーを低価格、場合によっては赤字で販売したことは、同社が認めていた事実である。2019年当時のガジェット担当幹部は「デバイスを売るときに儲ける必要はない」「人々が実際にデバイスを使うことで収益を上げている」と語っていた。

しかし、Alexaの使い道は高額のショッピングよりも、天気や時間の確認など無料アプリが多かったという。元従業員は「我々は1万人を雇い、スマートタイマーを作ったのではないかと心配していた」と証言している。

第2に、巨額の損失を出しても、新製品の開発にブレーキが掛からなかったことだ。たとえば2018年には50億ドル以上の赤字があったが、それでも家庭用ロボット「Astro」の開発に資金を投じたとのこと。このロボットは2021年に発表されたが、まだ一般販売はされず(招待制)、企業向け販売は中止された。

さらに、Alexaが他のAmazon製品と同様に「ダウンストリーム・インパクト」という不正確な尺度で測られていることも傷を広げているようだ。2011年に経済学者らにより開発されたという本指標は、顧客が購入後に「アマゾンのエコシステム内でどのように消費したかに基づき、その製品やサービスに財務的価値を割り当てるものだ」という。

この指標は、サブスクリプションサービスの契約や広告の売上に結びつくデバイス(Fire TVデバイスなど)には合理的だった。が、Echoのような他のデバイスは、実際よりも儲かっているように見せかけるよう利用されたフシがある。

たとえば、ガジェット開発チームは、上層部に大勢のスタッフを配置するなど高額なコストを正当化するために、ダウンストリーム・インパクトの数字を使っていたとのこと。また、収益が異なる機器で二重にカウントされることもあったという。

そうした状況を好転させるべく、Amazonは生成AI版Alexaを有料サービスとして提供する準備を進めている。が、その開発に関わっている匿名の人物は顧客が新たなサブスクリプションにお金を払うかどうか疑問視していると述べている。生成AI版Alexaは、動画ストリーミングや無料配達が含まれるAmazonプライムとは別料金になる見通しだ

Amazonの広報担当者は、同社が世界最高のパーソナルアシスタント構築に迫っており、それはバランスシートに示される数字以上の価値があると主張している。が、巨額の赤字はAlexa機器を通じた無料通話サービスなどがいつまで続けられるかを危惧させるほどだ。もしも新生Alexaが不調に終われば、Amazonのガジェット部門に残された時間は長くはないのかもしれない。

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