警察犬ロボはいまだに賛否両論
警察犬ロボット、立てこもり犯から3発の銃撃を受ける。警察は「人や犬を銃から守った」と称賛
米マサチューセッツ州警察は、爆弾処理班のメンバーの「1人」がチームのために銃弾を受けたと主張している。しかし、そのメンバーは人でも犬でもなく、ボストン・ダイナミクス社が開発したロボット犬(四脚歩行ロボット)Spotである。
3月上旬、「ロスコー(Roscoe)」の愛称で呼ばれるロボットは爆弾処理班に同行。バーンスタブル群にて武装して立てこもった容疑者にSWATチームが対応するに際し、2台のPackBot 510(爆弾処理や監視および偵察などに使われる多目的ロボット)ともに、建物内の偵察と状況把握のために投入されたという。
人間がリモコン操作するロスコーはまず、立てこもった家の最上階である2階を確認。さらに地下室を調べようとしたところ、容疑者にライフルで撃たれて倒れた。そして容疑者は階段を上り始めたが、ロボット犬は自力で起き上がって追跡。これに驚いた容疑者は、再び発砲。計3発撃たれたロスコーは行動不能になったとのことだ。
さらに容疑者はPackBotの1台も撃とうとしたが、失敗。その後にSWATが催涙ガスを家の中に持ち込んだところ容疑者は間もなく自首したという。
今回の活躍を、警察は「ロボット犬・ロスコーがバーンスタブル事件で法執行機関の人間パートナーの代わりに銃弾を受ける」と銘打ってFacebookに発表。ドアを開けたり階段を昇れるロボットの利点を端的に示す例であり、警官や犬が銃撃戦に巻き込まれることを防げたかもしれないと主張している。
しかしボストン・ダイナミクスのロボット犬を警察が使うことに、賛否両論がないわけではない。たとえば米ニューヨーク市警(NYPD)が現場にSpotを投入した際、人権擁護団体や一般市民から批判を浴び、特に有色人種の監視に使われる可能性があるとの指摘もあった。
こうした反発を受けて、NYPDはボストン・ダイナミクスとのリース契約を一度は打ち切り。しかし、2023年にニューヨーク市長は「命を救う」可能性があるとして、Spotを再導入している。
また、人々の「平和的ではない目的に流用されるのでは」との懸念に対応し、ボストン・ダイナミクスなど6社が「ロボットを兵器化しない」公開書面に署名したこともあった。
さすがに特定の地域だけでロボット犬が日々うろついて道行く人をカメラに収める状況は、どの街であれ反発を招く可能性があるだろう。今回のような銃撃戦を伴う事件が起こった場合、警官や犬の「命を救う」状況に限って採用が広がっていくのかもしれない。