なんでもCopilotにおまかせ
Bingチャットが「Copilot」に。マイクロソフト「Ignite 2023」の注目発表まとめ
マイクロソフトは11月15日、毎年恒例となっている開発者向けイベント「Ignite」を開催した。この記事では、同イベントで発表された注目トピックについてお伝えする。
AIアクセラレーター「Azure Maia 100」と汎用の新Armチップ「Azure Cobalt 100 CPU」
マイクロソフトは2つの「自社製」カスタムチップを開発していると発表した。この新しい演算チップはArmアーキテクチャを採用し、2024年にMicrosoft Azureサーバーファームに導入を開始する予定だ。
この新Armチップは「Microsoft Azure Cobalt 100 CPU」と呼ばれ、Microsoft クラウド上で汎用コンピューティング ワークロードを実行するために設計。クラウドにおけるワークフローで性能を発揮するよう、ワットあたりのパフォーマンスが調整されている。
一方、「Microsoft Azure Maia AI Accelerator」と呼ばれるチップは大規模言語モデルなどAIタスクと生成AI処理に最適化されたものであり、その構築にはOpenAIの協力が大きな手助けになったとのことだ。
Bingチャットが「Copilot」に改名、ウェブアプリ版「Copilot」導入
今年はじめに提供開始されたBingチャットは、一般ユーザーにも生成AIへの無料のアクセスを提供するものとして、すでに10億件を超えるプロンプトとクエリをこなしてきたという。
そして今回の発表では、Bingチャットが一連の「Copilot」ブランドに加えられ、その名前もズバリ「Copilot」になったことが明らかにされた。
Bing ChatとBing Chat Enterpriseの名称変更と並行して、Copilot専用ウェブアプリ「copilot.microsoft.com」の導入も発表された。このウェブアプリはCopilotインターフェース専用のランディングページとして機能し、ウェブ検索のほか、手紙やその他の文章作成を行うことができるという。
外観はこれまでマイクロソフトのアプリで提供されてきたCopilotのチャット画面と同様のもので、Microsoft アカウントまたはEntra IDアカウントにログインして使用できる。ログインすると、見慣れたチャットインターフェイスが表示される。
Bingチャットは人々の関心を引いてはいるものの、検索エンジンのBingへの呼び水としてはそれほど強力というわけでもなく、Bing検索の使用者数は前年比で減少したという。
マイクロソフトは、BingチャットをCopilotブランドに組み入れることで、OfficeアプリとWindows全体で成長するCopilotライブラリーと同様のサービスとしてアピールする効果を期待しているのかもしれない。
なおマイクロソフトは、Bing Chat Enterpriseにも同様の変更を行い、「Copilot Pro」という名前に変更すると発表。そして12月1日からは商用データ保護にも対応する。
独自の「Copilot」を構築できる「Copilot Studio」
独自の自然言語AI インターフェイスを作成できるという触れ込みの「Copilot Studio」は、いわばOpenAIのカスタムGPT作成機能のCopilot版だ。
Windows CopilotとMicrosoft 365 Copilotに加わった「Copilot Studio」では、Microsoft 365を利用する企業のチームが、社内のドキュメントやその入力に基づいたクエリ応答機能をもつ、AIチャットボットを構築できる。構築した独自の「Copilot」は、スタンドアローンで動かすこともできるが、将来的にはOpenAIのサービスと統合することも可能になる。
サティア・ナデラCEOは、社内の経理システムなどと連携して、たとえば「なにか提出すべき経費はあるか」と問えば、適切な回答を返すAIシステムが作成でき、業務負担を軽減できると述べている。
余談だが、マイクロソフトはあらゆるサービスにAI機能を導入し、次々と「Copilot」の名を増やしている。ただ、何でもCopilotと呼ぶのは、紛らわしいことこの上ない。もう少しセンスを持って名称を考えてほしいと思うユーザーは多いのではないかと思われる。
だが、当のマイクロソフトはCopilot Studioを紹介するブログ記事で「マイクロソフトはCopilot の会社です。間もなく、誰もが行うすべてのことを担当するCopilotが登場します」と述べている。Copilot沼にはまったユーザーはいつか、自分が使おうとするCopilotはどのCopilotだったかわからなくなり、適切なCopilotをCopilotにたずねることになるかもしれない。
あらゆるデバイスからクラウド上のWindowsを使える「Windows App」
「Windows App」は、iOSおよびiPadOSデバイスまたはウェブブラウザーから、クラウド上のWindows 365、Azure Virtual Desktop、Microsoft Dev Box PCの各環境、または個人のWindows PCにリモートデスクトップ接続できる新サービスだ。
ウェブアプリは、URL「windows.cloud.microsoft」にアクセスすることで、カスタマイズできるホーム画面として表示される。そして、そこから上記の各環境へアクセスが可能になる。
基本的にはリモートデスクトップツールと思えば良いだろう。さらに、マルチモニター、表示解像度のカスタマイズ、動的な表示解像度変更やスケーリング、周辺機器のリダイレクトなど多様な機能が提供されている。
なお、この機能でも利用できるが、Windows 365 Cloud PCに対しては「GPUサポート機能」の提供も発表されている。この機能により、必要な実行環境を満たしていれば写真やビデオの編集、3D モデリング、データ処理など、GPUの能力を使用するタスクの実行が快適になるようだ。
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