ロシアは反対するかも

「うるう秒」廃止の流れに対し、半世紀に1度の「うるう分」提案へ

Image:Roman Samborskyi/Shutterstock.com

米国立標準技術研究所(NIST)の時間および周波数部門のネットワーク同期プロジェクトを率いる物理学者ジュダ・レヴィン氏は、2035年までに廃止(または現在の方法での施行を廃止)される見込みとなった「うるう秒」に変わる地球の動きと現在の時計の誤差の調整手段として、新たに「うるう分」を提案する意向を明らかにした。

うるう秒は、実は一定でない地球の自転速度によって定められる時刻と、原子時計によって定められる標準時とのズレが次第に大きくなるのを防止するため、そのズレがプラスマイナス1秒に達する場合に、原子時計の時刻を1秒前後させて調整する取り決めのこと。

ただ、このうるう秒の調整は、いまやあらゆるものがつながっているコンピューターネットワークの世界においては時刻同期で問題が生じやすく、トラブルの原因にもなる。2012年と2017年に行われたうるう秒の調整でも各地で問題が発生した。調整は一斉に行われるのではなく、世界各地でその拡散浸透にタイムラグが生じるため、サーバーやネットワーク管理者は複雑な計画をあらかじめ準備しておく必要があった。

そのため昨年、国際度量衡局(BIPM)が、うるう秒をこのまま続けるか取りやめるかの投票を行い、取りやめが投票の大多数を占めたことで、2035年までに廃止することが決められた。

ただ、単純にうるう秒を廃止してしまうと、前述のとおり、地球の時点に関連する時間と標準時の差が次第に開いていってしまうため、新たな時刻調整の方法が検討されることになっていた。

レヴィン氏はその問題を解決するひとつの案として、11月20日からアラブ首長国連邦のドバイで開催されるITUが開催する世界無線通信会議(WRC-23)に、うるう分の導入を提案する論文を提出すると述べている。

提案されるうるう分の設定は、基本的には協定世界時(UTC)を原子時計に結びつけたままにしておき、地球の不安定な運動で生じる誤差が1分になるときにそのぶんの補正を行おうというものだ。

これまで数々のトラブルを数年ごとに引き起こしてきたうるう秒に対し、実施の間隔を半世紀程度に広げ、そのときに1分間だけ時間を調整するだけで良いとする提案にはおそらく反対の声は出にくいはずだ。

ただしおそらく、この提案にロシアは反対するものと考えられている。ロシアは昨年11月のうるう秒廃止の決定にも反対の意向を示し、2040年までは現在の方法を維持すること望むとしていた。

ロシアは衛星測位システムGLONASSに、うるう秒を考慮した時刻システムを導入している。そのため、うるう秒が廃止になると、ソフトウェア再構築の負担が発生してしまうと考えられる。

ロシア以外では、バチカンがうるう秒の廃止に反対する可能性が指摘されている。米アリゾナ州にあるバチカン天文台研究グループの副所長で天体物理学者でもあるポール・ガボール神父は、2017年の著書『The Science of Time』に記したように、正確な時間を保つことが「天文学の古くからの使命のひとつだ」と述べている。

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