思ったほどスマートじゃない?

空港で「スマート召喚」機能を使ったテスラ車、飛行機に突っ込む

Image:u/smiteme/Reddit

4月22日(日本時間)、掲示板サイトRedditに、Cirrus Vision SF50と見られる小型ジェット機にテスラが突っ込んでクラッシュする瞬間をとらえた監視カメラ映像が投稿された。

どうやらこのModel Yとみられる車は、ドライバーが駐車場から自分のいる場所まで自動でクルマを呼び寄せる”Smart Summon(スマート召喚)”機能を利用していたようだ。

テスラのEVには、自動運転機能としてAutopilotやその上位バージョンのFSD(Full Self-Driving)機能が用意されている。しかし2022年現在、これらはいずれも自動運転「レベル2」であり、完全な自動運転と思わせる名前とは裏腹に、常にドライバーがハンドルを握り、周囲に注意し、いつでも運転を手動に戻せるよう対応しなければならない。

一方、Autopilotに含まれるSmart Summon機能は、駐車場に駐めたテスラ車をドライバーのいる場所まで自動的に「召喚(summon)」することができる。そのしくみは、テスラ車がドライバーが手に持つスマートフォンのGPSの位置まで自動で移動するというもの。もちろん、完全な自動運転というわけにはいかないので、ドライバーは常に自動車の様子を監視している必要がある。

テスラ専門のニュースサイトTeslaratiによると、テスラ車が飛行機に接触したのは、ワシントン州スポケーンのフェルツフィールド空港で開催された、Cirrus社のイベントの場だったようだ。

説明したとおり、Smart Summonを使うにはドライバーは常にクルマの様子を見ておかなければならない。なおかつ、スマートフォンのテスラアプリの画面上のボタンを押し続けなければSmart Summonは停止するようになっているはずで、なぜこのModel Yが飛行機に接触しても動き続けているのか、ドライバーはどこを見て何をしていたのかが気になるところだ。

2016年5月、テスラ車はAutopilotを使用した走行中に、前方の交差点を横切って進行中のトレーラーを正しく検知できないまま衝突し、クルマのフロントガラスからルーフ、トランクリッドに至るまでを失ってドライバーが死亡する事故を起こしている。

のちの調査によれば、この事故の原因は、非常に明るい背後の空と、荷台部分の白い塗装が相まってイメージセンサーが正しく検知できなかったとされている。さらに、トレーラーの後部は横から見れば荷台の下がぽっかりと空いているため、今回の飛行機の後部への衝突とシチュエーションが似ているといえば似ているかもしれない。

2021年、テスラはその年の5月納車分からModel 3とModel Yにおいて、それまでイメージセンサーとレーダーを併用していたAutopilot機能をステレオカメラ”Tesla Vision”のみで提供するとし、レーダーを削除した。2022年2月以降はModel SとModel Xもカメラ式に切り替えられている。New York Timesはこの決定について、レーダーの削除を決定したイーロン・マスクが「人間が左右2つの眼だけで自動車を運転できるのだから、自動車もステレオカメラで運転可能になるべきだ」と主張したと伝えている

Cirrusのプライベートジェット「Vision SF50」(Image:Cirrus Aircraft)

ちなみに自動車メディアMotorTrendによると、テスラに衝突された飛行機はCirrus社のプライベートジェット機Vision SF50と確認されている。その価格は約200万ドル(約2.6億円)とのこと。また、この空港内に自動車を乗り入れる際は、商業事業者で100万ドル(約1億2800万円)、個人の格納庫契約者の場合は30万ドル(約3900万円)の保険加入が必要とのことだ。

映像からは飛行機にもクルマにも、それほど大きな破損はなさそうに見える。修理費用が保険額に収まることを祈りたい。

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