本当に役に立つものとはなにか

元ダイソンの技術者、電源不要の革新的(?)手回し洗濯機を開発し世界に貢献

Munenori Taniguchi

Image:The Washing Machine Project

以前はダイソンUKに務めていたというインドの航空宇宙エンジニア、ナブジョット・ソウニー氏は、自身が設立した会社The Washing Machine Projectで手回し式洗濯機を開発し、大きな成功をおさめている。

イギリスからインド南部の小さな村に移住したソウニー氏は、近所に住むディヴィヤという名の女性が週に最大20時間も洗濯に時間を費やしていると聞いて驚いたという。そして、ソウニー氏は洗濯機を買ってあげようと申し出たのだが、彼女はそれを断ったとのことだ。

なぜならば、インドの片田舎では安定した電力供給を受けることが難しく、洗濯機を動かすのに十分な水を用意するのも大変だったからだ。

事情を聞いたソウニー氏はならばと、電気や大量の水に頼らず、いまの手洗いよりもはるかに効率良く洗濯をこなすことができる何かを作ろうと考えた。

そして出来上がったのが、最大7kgの衣類をわずか30リットルの水で洗える手回し式洗濯機だった。これを使えば、手で衣類を洗う場合に比べて作業時間は75%も短縮でき、水の使用量も半分で済むという。さらに耐久性は少なくとも5年から10年もつことを考慮して設計したとのことだ。

Image:The Washing Machine Project

ダンボール箱に収められて届くため、この洗濯機は購入後、使い始める前に組み立て作業が必要になる。だが、同梱されている工具ひとつで、女性でもかんたんに組み立てられるようになっているという。サウニー氏は、開発のきっかけになった女性に敬意を表して、この洗濯機を「Divya」と名付けた。

Divyaは電力供給が不安定あるいはまったくない僻地や貧困層の済む地域、さらには災害被災地で、人々のQoLを改善するのに役立っている。この製品を製造するために立ち上げたThe Washing Machine Projectは、これまでにイラク、レバノン、メキシコ、ウガンダ、米国など約10.5万人にこの洗濯機を届けてきた。

サウニー氏は人道支援プログラムやパートナー団体が資金提供するプログラムを経由して、それを必要とする人々にDivyaを無償提供しているという。2030年までには、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)や、オックスファム、プラン・インターナショナルなどの貧困層を支援する団体を通じて、100万人にDivyaを届けていく方針だ。

Image:The Washing Machine Project

世界の貧困削減や格差解消に向けた政策提言を行うCenter for Global Development(CGD)は、2025年に世界50か国を対象に調査した結果、「女性は主な活動として週平均29.92時間を家事労働に費やしているのに対し、男性はわずか9.78時間しか費やしていない」と報告している。

その理由は宗教や風習など文化的背景もあって様々だが、こうした無収入労働がもたらす機会損失は莫大なものになる。日々の選択に追われて収入を得られないことは、将来的に得られる年金保障の減少、教育を受ける機会の逸失、QoL全般の低下などにつながる可能性がある。

もちろん、洗濯機がそれらをすべて解決できるわけではないが、少なくとも洗濯に追われていた時間を、社会経済的な発展や、個人の自由を促進するために有効に使うことができるはずだ。

サウニー氏は今後もDivyaの改良を重ね、扱いやすさやメンテナンス性を高めていくことを考えているという。

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