どのようなApple Watchユーザーに役立つのか

Apple Watch新機能「準備度」を2週間かけて体験した

山本 敦

2026年モデルのApple Watchに搭載された「準備度」アプリを詳しく解説する

2026年モデルとなる新しいApple Watch Series 12とApple Watch Ultra 4が、9月18日に発売された。新規に開発されたヘルスセンシングシステムを搭載して、ユーザーに提供する健康機能を大きく拡大している。

そのひとつとなるのが「準備度」アプリだ。どのようなApple Watchユーザーに役立つ機能なのか、約2週間にわたる筆者の検証結果をレポートする。

バイタルと何が違う?「準備度」の仕組みを理解する

準備度アプリは最近の活動量や睡眠、バイタルのデータを分析し、その日にユーザーがどれほど活動できる状態なのかを「0〜10」のスコアで示す機能だ。

スコアは0〜1が「休養」、2〜4が「無理せずに」、5〜7が「準備完了」、8〜10が「絶好調」の4区分。Apple Watchの準備度アプリやiPhoneのフィットネスアプリではアクティビティ、バイタル、睡眠のうち、どの項目がスコアに影響したのかも確認できる。

中央が「準備度」アプリのアイコン
筆者の場合、大体が「準備完了」、または「無理せずに」のあたりのスコアが多く表示される

準備度が利用できるApple Watchは、新しいヘルスセンシングシステムとApple S11チップを搭載するSeries 12とUltra 4に限られる。準備度を利用するにはアクティビティと睡眠を初期設定し、Apple Watchで睡眠と夜間バイタル値を記録できる状態にしておく。

過去49日間のうち、少なくとも7晩はApple Watchを着けて眠らなければならない。つまりデバイスを購入した直後から使えるわけではなく、ユーザー自身の「基準値」をつくる準備期間が必要だ。

なお、2024年のwatchOS 11から提供されている「バイタル」アプリとはどこが違うのか。バイタルは、睡眠中に計測した心拍数、呼吸数、手首皮膚温などを自分自身の基準範囲と比較し、体調の変化を把握する機能だ。

そして、Series 12とUltra 4ではバイタルアプリに新しく「日中バイタル値」の表示が追加。これにより、日中に測定された安静時心拍数と心拍変動(HRV)を確認できるようになった。

新しいヘルスセンシングシステムを搭載するApple Watchは心拍計測の精度が大きく向上している

対して準備度は、バイタルを含む複数の情報に最近のアクティビティ、トレーニング負荷、睡眠スコアを組み合わせ、「今日はどの程度まで活動できそうか」をひとつの数値にまとめる。

バイタルが身体の状態を読み解くための材料なら、準備度はその材料を1日の過ごし方に結び付ける指標と考えればわかりやすい。

新開発のヘルスセンシングシステムがブレイクスルーに

筆者は9月、米アップル本社でApple Watch Worldwide Product MarketingディレクターのEric Jue氏に、2026年モデルのApple Watchが搭載するヘルスセンシングシステムができたことにより、新たに追加されたひとつの機能としての観点から、準備度の開発意図を聞いた。

Jue氏によれば、アップルは以前から心拍数とHRVをもっと高い頻度で測り、日常の行動に身体がどう反応したのかを見える形にしたいと考えていたそうだ。しかし、従来の技術では、日中のバイタルや準備度に十分な価値を持たせられる「測定頻度」が実現できていなかった。

そこで、心拍数を従来の約5分ごとから5秒ごとに測定できる「ヘルスセンシングシステム」を新規に開発した。測定頻度は従来の約60倍になる。HRVも安静時には最短約5分間隔で取得する。

より多くのバイタルデータを、電池持ちは従来のApple Watchの体験をキープしたまま取得し、処理できる。ヘルスセンシングシステムと、最新のAppleシリコンである「Apple S11」も準備度を支える重要な基盤だ。

Series 12とUltra 4は最新のヘルスセンシングシステムを搭載。きめ細かな生体データ計測ができる

Jue氏は、準備度は朝に一度だけ確認する数字ではないと説明する。激しいワークアウトをすれば下がる場合があり、長く昼寝をすれば上がる場合もある。日中の心拍数など新しいデータを反映し、1日の中でも随時更新されるからだ。

アップルが目指したのは、運動や休養をユーザーに指示する機能ではない。自身のコンディションをタイムリーに把握し、より積極的に体を動かすのか、それとも休息を取るのかをユーザー自身が判断しやすくする体験を届けることだ。

計測開始から12日。最初のスコアが表示された

筆者は発売日の数日前からSeries 12を入手し、「準備度」を使うための計測を始めた。装着を始めてから7日経てばすぐにスコアが表示されるだろうと予想していたが、あては外れた。必要なのは単なる7日間の経過ではなく、条件を満たして「正しく取得された7晩以上のデータ」だからだ。

いくつか思い当たる失敗があった。眠っている間にウォッチが手首から外れたり、大きく位置がずれたりした日がある。海外出張を挟んだため、タイムゾーンの変更が睡眠記録に影響した可能性もあるだろう。出張期間中には疲れで寝落ちしてしまい、Apple Watchの充電後にパスコードを解除しないまま眠り、計測が無効になったと思われる日もあった。

試行錯誤を重ねて、計測開始から12日目。ハワイに滞在している期間中に、ついに準備度スコアが表示された。初めてウォッチに準備度スコアが表示された瞬間は、あまりの達成感に思わず歓声をあげてしまった。

ハワイに滞在しているときに、ようやく最初の準備度スコアが表示された

安定した計測を行うためには、Apple Watchのバンドの選択も重要だと思う。筆者は夏場も汗が蒸れにくいNikeスポーツバンドを使っていたが、バンドにたくさんの孔が空いているため、誤って緩めに締めたまま睡眠計測を始めてしまうことがよくある。

取材の折にアップルの担当者から、面ファスナー(マジックテープ)でしっかりと締め具合を調整できるNikeスポーツループの方が、就寝中も手首へ密着させやすいと教わった。バンドを入手して試してみると、なるほどウォッチの位置が安定し、計測を逃すことが少なくなった。きつく締めすぎず、センサーが肌から離れない位置に固定することがポイントだ。

Nikeスポーツループの新色「グリーンスパーク」。ウォッチ背面のヘルスセンシングシステムを手首にピタリと付けて装着できる。もちろん、Nikeモデルではないスポーツループバンドでも同等の密着感が得られるだろう
ブラックアルミケースのApple Watch Series 12ともよくマッチする

「絶好調」がワークアウトの背中を押す

準備度は夜間バイタル値などを基に、まず起床時にスコアを示す。その後も日中の活動、昼寝、心拍数などのデータを反映しながらスコアは変動する。アップルが日中バイタルを取り入れた理由は、より正確なバイタル値をユーザーに提示するためだ。

なぜなら朝から1日を通して、身体の状態は必ずしも一定ではないからだ。心拍数は歩行や運動だけでなくコーヒー(カフェイン)の摂取、水分不足、その他諸々の環境変化などにも反応する。夜間だけでは捉えきれない変化まで含めることで、現在の状態に近い評価を提示できる。

バイタルは日中の変動値を計測できるようになった

実際に使うと、準備度は運動の可否を決める絶対的な判定ではなく、ペース配分を考えるための補助線として役に立った。ジムでしっかり身体を動かした日には、その後のスコアの変化を確認して効果を実感できる。

よく眠れなかった翌日に、準備度スコアが「無理せずに」と表示されれば、その日は緩めに活動しながら回復を優先する。反対に朝から「絶好調」が表示された日は、「今日は頑張ってよし」と背中を押してもらえる。

名前は準備度だが、受け止め方によってはユーザーの「回復度」の指標でもあると思う。高いパフォーマンスを毎日求めるのではなく、疲労が蓄積した時には休み、回復したら再び活動量を上げる。平均的に良好なコンディションを持続するために使う方が、この機能の本質に近いと感じた。

iPhoneのヘルスケアアプリには「バイタルについて」「バイタルを理解する」という解説も用意されている。バイタル値は病気やけがを診断するものではなく、自分の通常範囲から外れた変化に気づくための情報だ。

説明によると、病気による体調不良に限らず、例えば飲酒、多めのカフェイン摂取、激しいトレーニングや標高の高い場所への旅行などでも数値は動く。単独の外れ値に一喜一憂せず、自分の行動や環境と照らして読み解く姿勢と習慣が大切になる。

バイタルとは何かと、これをApple Watchのユーザーが把握することの大切さをヘルスケアアプリ上で解説している

Apple Watchが毎日のコンディション管理も支援する

筆者はwatchOS 11でバイタルが登場して以来、自分のコンディションを気軽に把握するためのツールとして愛用してきた。準備度が加わったことで、Apple Watchは心拍数や睡眠を記録するだけでなく、日々の疲労の蓄積と回復を、より広い視点から見守る相棒になったと実感している。

0〜10のスコアと4区分の評価は直感的で、複数の測定値をひとつずつ読み解くよりも、その日の状態を大づかみにしやすい。一方で準備度は始まったばかりのプレーンな機能でもあると思う。現状は状態を示すことが中心で、「では今日は具体的にどう過ごすとよいのか」という提案には、まだ発展の余地がありそうだ。

ユーザーのコンディションを把握して、脚色せずに評価を伝えてくれる。ただ、筆者のようにもう少しアドバイスが欲しいユーザーのため、Siri AIと話しながら健康管理や体力増進のための計画を立てられる機能も拡大してもらいたい

例えば将来はSiri AIと対話しながら、より良好なコンディションを保つためのアドバイスを受けたり、パーソナルコーチ的な使い方ができると面白い。その日のスコアに合わせてFitness+のトレーニングを勧めるなど、アップルのサービスとの連携にも期待したい。ときには軽いチャレンジを提案するような、エンターテインメント性が加わってもよいと思う。

準備度は、Apple Watchが「測るデバイス」から、ユーザーの毎日を一緒に整えるコーチとしての役割を拡大するための重要な一歩といえる。蓄積されるデータと利用者のフィードバックを活かしながら、今後どのように進化していくのか楽しみだ。

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