10年以上もiPhoneやApple Watchで使われてきた技術

アップルに約9000億円の賠償評決。iPhoneなどの「Taptic Engine」が複数の特許侵害

多根清史

Image:Rabanser/Shutterstock.com

カリフォルニア州南部地区連邦地方裁判所の陪審員は、アップルに対しTaction Technologyの保有する特許を侵害したとして、約57億ドル(約9000億円)の賠償金を支払うよう命じた。

ただし、アップルは控訴の意向を表明しており、賠償額や特許侵害の判断は今後変更される可能性がある。

訴訟の対象となったのは、iPhoneやApple Watchで触覚フィードバックを発生させるハードウェア部品「Taptic Engine」である。音を鳴らさずに着信やメッセージ、タイマーなどを振動で知らせるほか、デジタルクラウンを回した際のクリック感や、ゲームでの被弾・衝突といったイベントに合わせた手応えを表現するためにも使われている。

Taptic Engineは、2015年に発売された初代Apple Watchに初めて搭載された。iPhoneでは、2015年発売のiPhone 6s/6s Plus以降に採用されている。

原告のTaction Technologyは、米カリフォルニア州を拠点とする触覚・音響技術企業だ。同社は2021年に訴訟を起こし、アップルが同社の特許を「直接的および間接的に侵害しており、現在も侵害し続けている」と主張した。

これに対してアップルは、特許の無効と非侵害を主張してきた。2023年には一度アップル側に有利な略式判決が出たものの、2025年8月に連邦巡回区控訴裁判所がこれを破棄して差し戻し、今回の陪審評決に至ったという流れである。

米CNBCによると、この訴訟では米国特許第10,659,885号と第10,820,117号が争点となった。いずれも、ユーザーが操作した際に端末が反応したことを振動で感じられるようにする、触覚フィードバック技術に関する特許だ。Tactionは訴状で、アップルのTaptic Engineがこれらの特許を侵害していると主張し、同社が「Tactionのイノベーションと成功を利用して利益を得ている」と述べている。

一方、アップルの広報担当者は「陪審員の皆様による審理には感謝するが、本日の評決と認定された損害賠償額には強く異議を唱える。これらは事実によってまったく裏付けられていない」と反論。さらに「アップルのTaptic EngineはTactionの技術とは根本的に異なっており、このことは公判中にTaction自身がアップル製品をテストしたことによって確認されている。アップルはTactionの技術を使用しておらず、われわれは控訴する」との声明を出している。

今回の評決額がどのような計算によって導かれたのか、特許ごと・製品ごと・期間ごとの内訳は現時点で公表されていない。

あくまで推測だが、侵害が認定されたTaptic EngineはiPhoneやApple Watchに10年以上にわたって搭載され、対象となる製品や販売期間が広範に及ぶ。その事実が損害賠償額を押し上げた可能性はあるかもしれない。

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