見栄のためにAIを使うのではなく、実際の成果を挙げろとの社内指示も

マイクロソフト、ある従業員がわずか28日間でAIを約448万円分も使い込み。全体の使用状況監視を強化へ

多根清史

Image:TSViPhoto/Shutterstock.com

マイクロソフトのある従業員が、1か月足らずの間に2万8000ドル(約448万円)相当のAIトークンを浪費していたことが明らかになった。現在、同社はトークン使用状況の追跡と、AnthropicのClaudeをコーディングのために使うことを積極的に推奨しなくなったという。

ここ数年、マイクロソフトは社内の開発部門において、AIの活用を強く奨励してきた。だが、社内で給与・ボーナス情報の共有に使われているスプレッドシートに「月間AI使用料」の列が追加されると、自主的に報告された内容から、ある従業員がわずか28日間でAIツールを約448万円分も使い込んでいたことが発覚したと、米消費者向けレビューサイトGadget Reviewが報じた。


マイクロソフトは全世界で22万3000人を超える従業員を抱えているが、今回の例は米国の約350人が上記スプレッドシートに自己申告したことでわかったという。回答者全体の中央値は月額300ドルと控えめだったものの、部門別の中央値と最大値にはあまりに大きな開きがあった。

もちろんこのデータは、マイクロソフト全体の状況を反映しているわけではない。だが今回報じられたような、特定の従業員がAIトークンを過剰に使い込んでしまう事例はほかでも報告されている。その背景には、「tokenmaxxing(トークン最大化)」と呼ばれる問題がある。

これは、従業員が社内におけるAI使用量ランキングで自分をよく見せかけようと、価値の低い、あるいは全く役に立たないクエリに意図的にAIトークンを注ぎ込む行為を指す。具体的には、AIチャットボットに対しむやみに長大なプロンプトを送信したり、大量のコンテキストを与えたり、特に意味のない自動クエリを実行したりすることなどが挙げられる。

つまり、大量のAIトークンを浪費していた従業員は、ただ見栄を張るためだけにAIを動かしていた可能性があるということだ。

当然ながらマイクロソフトは、こうした動きを止めさせようとした。ある幹部は、配下のチームに対し「トークン最大化は我々が目指しているものではない。私は、私たち全員が、顧客とビジネスにとって大きな成果をもたらす結果を最大化することに集中してほしいと思っている」と警告したと報じられている。


そして、同社はこうした問題の再発防止策としてトークン使用量とそれによる費用を従来より厳しく追跡し、高額利用者を容易に割り出せるようにした。さらに、社内の標準的なワークロードをOpenAIのGPT-5.6 Solへ移行し、コーディング用途にAnthropicのClaudeなど外部ツールを使うことを控えるよう促しているとのことだ。


今回の事例よりも少し前、米Amazonでも、単純なコーディング作業でClaudeの使い方を誤り、予算の8倍を超える請求が発生した一件が報じられていた。ただ、こちらは従業員が意図的に行ったものではなく、複数の「小さなミス」によるものだったとされている。

この2つの事例は、単純にAI利用を奨励するだけの時期はすでに終わり、膨らみ続けるAI利用コストをいかに監視し、どこでブレーキをかけるかが重要になっていることを象徴していると言えそうだ。

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