燃費はロマンで相殺します

マツダ、ロータリーエンジンの排ガス問題を改善する新特許を米国で出願

Munenori Taniguchi

Image:Mazda

現在、ロードスターを除けば、一般向けの販売車種がほぼすべてSUVという保守的なラインナップに落ち着いているマツダだが、最近米特許商標庁(USPTO)に提出された特許出願技術は、筋金入りのマツダファンなら気になるであろうロータリーエンジンに関するものだ。

マツダがロータリーエンジンをレンジエクステンダー用に搭載してお茶を濁すのでなく、ハイパフォーマンスなスポーツカーに復活させるという噂は何年も前から流れている。そして、コンセプトモデルのICONIC SPやVision X-Coupeは、そのうわさをさらに煽る、「マツダスピリット」を感じさせるものだった。

Image:Mazda

ただ、コンセプトモデル、ショーカーにロータリーエンジンを載せることはできても、それだけでは人々にそのロータリーエンジンの楽しみを伝えることはできない。市販モデルとして市場に送り出すには、排ガス規制や耐久性試験に合格させる必要もある。

しかし今回の例を見てもわかるように、マツダは決してロータリーエンジンを諦めてはいない。この特許出願では、新型ロータリー向けに新しい排気ガス再循環(EGR)システムを開発していることがわかる。

EGRシステムは内燃機関(ICE)車において目新しい技術ではなく、現代のガソリン車やディーゼル車はほぼすべて、排気ガスの一部をエンジンに戻して排出ガスを削減するこのシステムを搭載している。しかし、マツダが市販車にロータリーエンジンを搭載していた数十年前は、まだこのシステムはそれほど普及していなかった。そのため、EGRを搭載するロータリーエンジンは、これをレンジエクステンダーとするMX-30 Skyactiv R-EVが採用しているものだけだ。

Image:Mazda
Image:Mazda/USPTO

出願書類に記された図面を見ると、ロータリーエンジンはレシプロエンジンにあるバルブの代わりに、燃焼室となるローターハウジングの側面あるいは外周に設けられたポートから燃焼済みの空気を排出していることがわかる。排気ガスの大部分は側面(サイド)ポートから排出されるが、一部は外周(ペリフェラル)ポートからも排出される。このとき、ペリフェラル側の排気はサイドポートからの排気よりも温度が低くなる。

そこでマツダは、この2つの排気経路を完全に異なる経路に分割している。大容量・高温のサイドポート排気は、直接ターボチャージャーへと送られる。つまり、新世代のロータリーエンジンとはRX-8に搭載されたRENESISとは異なり、より高い出力を得るために、ターボチャージャーを搭載している。

Image:Mazda

一方、温度の低いペリフェラル側の排気は、エンジンブロック内部の通路を通ってEGRクーラーへと送られて、エンジンの冷却システムでさらに温度を下げる。すでに温度が下がった状態の排気を使用するため、EGRクーラーも小型のものを採用することが可能になる。

高出力時のように、エンジンがEGRを必要としないときは、排気は二次触媒コンバーターに送り込まれるようになっている。ただ、資料の中では、なぜ一次側のコンバーターをバイパスしているのかは説明していない。

全体としてこの技術が示しているのは、マツダがターボチャージャーによってロータリーエンジンの出力を向上させつつ、EGRの流量を増やすことで排出ガスを削減しようと考えている、ということだ。理論的には、これによって、マツダは排出ガス規制をクリアしつつエンジンの出力を向上させることが可能になるということだろうか。

特許を出願するということは、特定の条件下ではすでに一定の成果が出ているのかもしれない。ただ、ロータリーエンジンはレシプロ式とは異なり、エンジンオイルの一部を燃焼させながら稼働したり、ハウジングとローターの仕切りとなる摺動パーツであるAPEXシールのようなデリケートな構造を抱えている。なにより、宿命である燃料消費の問題は、根本的な解決策が見つかっていないため、まだまだ開発には時間がかかると考えておくのが良さそうだ。

とはいえ、マツダはロードスターよりも上位のスポーツカーの可能性について頻繁に言及しており、それを考えるといつか本当にRX-7、RX-8以来のマツダ・ロータリースポーツが登場するという夢を見ずにはいられない。

Image:Mazda

関連キーワード: