安全こそ最優先

中国で新たな「空中スクールバス」が開通。落差268mの「通学路」を昇降

Munenori Taniguchi

Image:Yunnan Net

中国には、われわれ日本人の常識では想像し難いような光景がいくつもある。たとえば雲南省にある、高さ268mの断崖絶壁がそれだ。そして、その崖を山羊よろしく上り下りする小学生の姿も、かつてはそうだった。

この絶壁の下側に暮らす住民の子どもたちは、上にある最寄りの学校へ向かうために、ロープなどを使って命懸けで上り下りしていたのだ。その様子は日本のテレビ番組などでも何度か取り上げられたことがあるので、覚えている人もいることだろう。

Image:ShanghaiEye魔都眼(YouTube)

しかし先月末、その崖に新たに「空中スクールバス」なる乗り物が完成した。スクールバスという表現が誤解を招くかもしれない。わかりやすく言えばこれは崖の上と下を一直線に結ぶエレベーターのことだ。

世界にはこれよりも高いビルやタワーがいくつも存在する。だが、それらの多くは、人々の生活を直接的に変えるようなものではない。一方、この空中スクールバスは、子どもたちが約10日おきに自宅と学校の寄宿舎を行き来する際の、約3時間に及ぶ時間と「命の危険」を取り除くという重要な役割を担っている。

地元ニュースメディアの雲南網によると、「2基目は1基目より20メートル高く、360度全面ガラス張りの透明なカーテンウォールを備え、屋外の景色を楽しめるようになっている」という。また、運行速度は秒速5mで、子どもたちを2基のエレベーターを合わせた輸送能力は1時間当たり1200人にも上る。

なお、このエレベーターが設置された理由は、もともとは子どもたちが安全に通学できるようにするための「ラストワンマイル」を解消するためだけではなかった。政府や地元自治体は、2017年にこの断崖絶壁とそれを含む峡谷を観光地として売り出す計画を立ち上げたことで、エレベーターと、さらに崖の上から山の頂上を結ぶロープウェイの建設が決定された。

そして2022年には、実はすでに1基目のエレベーターとロープウェイは運用を開始した。運賃は、観光客は有料だが、学校に通う子どもたちおよび現地住民は、無料かつ優先的に利用できる。

気になるのは、断崖絶壁にガラス張りの人工物を建設したことでせっかくの景観が損なわれている気がするところだ。だがそうだとしても、子どもたちが安全に学校に通えるようにすることが、このエレベーターにとって真に意義深いことであるのは間違いないだろう。

関連キーワード: