ドライバーは 「自動車で音速を超えた男 」

時速653.91km!1600馬力ツイン水素エンジンの「JCB Hydromax」がFIA世界最速記録を樹立

Munenori Taniguchi

Image:JCB

多国籍建機メーカーJCBは、米ユタ州のボンネビル・ソルトフラッツで開催された自動車の速度記録大会「Speedweek」で時速592.797kmを記録した。そして、その数日後には時速653.91kmという国際自動車連盟(FIA)の世界陸上速度記録を更新した。

JCBは20年前に、同じ場所でディーゼルエンジン搭載車両Dieselmaxを擁して最高速度記録にチャレンジし、時速510kmというディーゼル車最速記録を樹立していた。

今回のチャレンジは、20年前のDieselmaxプログラムに倣い、再びJCBの掘削機生産ラインからエンジンを採用した。改造が施された2基のターボチャージャー付き4気筒エンジンは、同社の「掘削機用」水素内燃エンジンをベースとし、合計1600馬力を発生する。

そして、そのアクセルを前回まで踏み込むのは、Dieselmaxでもステアリングを握ったアンディ・グリーン英国空軍中佐(OBE)だ。ボンネビルに戻ってきたグリーン中佐は、Hydromaxで乾燥した平坦な砂漠をまず時速644.74kmで走り、その後Uターンしてスタート地点めがけて走行し、驚異的な時速663.27kmを記録。公式記録となる往復の平均速度は653.91kmに達した。

Image:JCB

日本の新幹線を時速300km以上の速度差で追い抜いていくスピードだと思えば、それがいかにとてつもない速さかわかる。だが、グリーン中佐は1997年にジェットエンジン搭載のThrust SSCで、音速の壁を破る時速1227.99kmを叩き出した経験もある。そのため、この手のチャレンジはもはや慣れたものだったかもしれない。

「この車は素晴らしかった――安定感があり、パワフルで、速かった」「Dieselmaxから20年を経て、水素動力で世界陸上速度記録を樹立できたことは、この上なく光栄なことだ。この記録は、世界トップクラスのチームと卓越した技術による偉大な成果だ」と、グリーン中佐は記録達成後にJCBのチームを称賛した。

JCBは、ただバカッ速いクルマを作りたかったわけではなく、今回のチャレンジを1億ポンドを投じる水素開発イニシアチブの一部だと述べている。水素エンジンは排気ガスに水蒸気とわずかな窒素酸化物しか排出しないため、現在のガソリンおよびディーゼルエンジンに代わる低排出ガスエンジンとしてのポテンシャルを備えている。

Image:JCB

JCB会長のアンソニー・バムフォード氏は「20年前、私たちはJCBディーゼルマックスでボンネビルに乗り込み、英国のエンジニアリング技術がディーゼルエンジンで何ができるかを示した」「今日、われわれは再びそれを成し遂げることができた。しかも今回は水素を動力源とするエンジンでそれをやってのけた」とその技術的意義を語った。

Hydromaxによる速度記録樹立は、水素エンジンが極限性能を追求できる段階に来ており、驚異的な速度を叩き出せることを実証する結果だと言えるだろう。水素エンジンは今や、研究プロジェクトの域を出て、量産化も実現可能な道筋が整っているとも言えそうだ。

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