日本では早くから実用化
子どもの虫歯「削らない治療」の有効性が米国で確認

子どもの重度の虫歯(う蝕)治療において、フッ化ジアンミン銀(Silver Diamine Fluoride:SDF)を用いた「削らない治療」が有効かつ安全であることが、大規模な第III相臨床試験(多数の患者を対象に、標準治療やプラセボと比較して有効性・安全性を検証する承認前の最終段階試験)で示されたと報じられている。
米ミシガン大学の研究チームは7月、学術誌「JAMA Pediatrics」に掲載した論文で、「液体フッ化物は、虫歯リスクの高い幼児に対する有効な非侵襲的治療法となり得ることが示され、FDA(米食品医薬品局)の承認に向けた検討を後押しする」と記している。
虫歯は、細菌によって歯の表面が侵食されることで生じる穴である。米国では40%を超える子どもが何らかの虫歯を発症しているという。通常は詰め物で治療されるが、虫歯が深部まで進行して感染を引き起こした重症例では、より侵襲的な根管治療や、場合によっては抜歯が必要となる。
フッ化物が虫歯予防に役立つことは以前から知られており、そのため世界各地では飲料水に少量のフッ化物を添加している国や地域もある。また、既存の虫歯の進行を予防、あるいは停止させる効果もあると考えられている。なお、日本では自治体の水道事業として意図的なフッ化物添加は行われていないが、水道水には天然由来の微量のフッ化物が含まれている。
今回の試験では、6歳未満で重度のう蝕を持つ子ども830人を対象に、38%濃度のSDFを投与した。SDFはスポンジ付きチップで患部の歯面へ塗布され、初回と6か月後の計2回投与。その後8か月間にわたって経過観察が行われた。最終的に、参加した子どもの70%が試験を最後まで完了した。
8か月後の時点では、SDFを投与された子どもの約50%で虫歯の進行が認められなかった。一方、プラセボ群(偽薬を投与されたグループ)では17%にとどまり、SDFは虫歯の進行抑制において有意に高い効果を示した。
SDFは銀成分の作用により、歯が恒久的に黒く変色することが知られている。こうした見た目の副作用はあるものの、いずれ生え替わる乳歯であれば、それほど大きな懸念にはならない可能性が高い。
研究代表者のマルゲリータ・フォンタナ氏は、「より多くの子どもと家族が恩恵を受けるには、その有効性と安全性を示す厳密なエビデンスが必要である。公衆衛生の観点から、医療現場を含め米国全体で広く導入したいのであれば、米国の集団で慎重に収集されたデータが必要であり、私たちはそのデータを得た」と述べている。
主な用途は小児向けとなる可能性が高いが、ほかの治療を受けられない、あるいは費用を負担できない成人にとっても、有用なつなぎの治療法となる可能性があるという。
なお、日本では歯を削らずに虫歯の進行を止める薬剤として「サホライド」が古くから使用されており、38%溶液は国民健康保険の適用対象となっている。一方で、前述のように歯が黒く変色する副作用があるため、どの歯科医院でも第一選択として積極的に用いられているわけではない。
一方の米国では、低所得者層にとって歯科医療は費用負担が大きく、受診しにくい状況が続いている。特に重度う蝕の標準治療は侵襲性が高く、費用もかさみやすい。そのため、非侵襲かつ低コストで治療できるSDFが広く普及すれば、その意義は大きいだろう。
- Source: JAMA Pediatrics
- via: Gizmodo
