プロジェクト発表から約2年
世界初、AR搭載のスマート双眼鏡「ENVISION」ついに発売へ。星や山など教えてくれる、約26万円

スマート望遠鏡を展開してきたフランスのUnistellarは、AR機能を搭載する双眼鏡「ENVISION」(エンビジョン)を発表。ハードウェアは完成済み、コアソフトウェア(方位制御)は95%完成しており、正式リリース間近だとしている。現在はアーリーアクセス・プレビューの段階としており、今後数週間でUIとコンテンツをさらに進化させていくという。価格は259,000円(1500ドル/1500ユーロ)を予定する。
ENVISIONは、右目部分にディスプレイを内蔵し、AR表示が行えるというスマート双眼鏡。2024年6月に米Kickstarterでのプロジェクトが発表・開始され、2025年11月の発売を目指していた。ようやく開発が終わり、発売に向けての最終段階に到達した格好だ。なお、視野のなか全体に映像を重ねられる双眼鏡として、世界初のものになるとしている。
Unistellarは2015年6月に設立されたフランスの企業。これまでに4つのスマート望遠鏡を開発し、2万5,000台がすでに出荷されている。NASAやSETI研究所と科学的な協力関係を結んでおり、論文も共同で執筆しているとのこと。光学設計や部品供給などにおいてニコンとも協力している。
Unistellarの共同創業者兼CEOのローラン・マルフィシ氏は発表会にて、「小学生の頃、空を見上げて当時持っていた望遠鏡で見て夢見ていたことを実現したい」という思いで立ち上げたと話す。一方で、「普通の望遠鏡では欲求が満たされない」とマルフィシ氏。通常の望遠鏡で遠くの天体を見ることは難しく、月などしか見えないのがフラストレーションだという。

そこで目指したのが、精密なセンサーを搭載することで、人の目で見ることができない星雲や銀河をデジタルで見られるようにする望遠鏡だ。さらに大人になると時間がなく「一晩中空を見ることができない」とのことで、そういった人にも使えるものを目指したという。そして生まれたのが初代「eVscope」であり、上述のように今日までに4機種を投入してきた。
ENVISIONは、Unistellarとして初めての双眼鏡だ。この開発に至った経緯として、「直感的に使える双眼鏡で空を眺めるのは素晴らしいひととき」としつつ、双眼鏡では「拡大するせいで、知っているはずの星座が見失われてしまう」とマルフィ氏は説明。ENVISIONはそれを解決できるものだという。
本製品は10倍のポロプリズム双眼鏡に、ディスプレイの表示を重ねている。ビデオパススルー方式ではないため、マルフィ氏は双眼鏡を通して「本当の景色」が見られると説明する。これにより、山の名前や天体などを視界に重ねて表示させる「スマートスカウティング」を使うことが可能。視野内にインタラクティブなAR星図や、昼間の周辺地形・景観に関する情報をリアルタイムに表示できる。

さらに、アプリで選択した天体やランドマークの方向をガイドすることで探すのを助ける「ガイド付きナビゲーション(Go-To機能)」も備えている。気になる対象をロックする「ターゲットロック」機能も搭載しており、他の人に製品を渡した際にその対象へ案内することが可能。

なお、本製品にはカメラを搭載しておらず、 “高度な方向感覚” を与えるアプローチを採用。その理由として、カメラで捉えるには星の光が微弱すぎること、そして手で持つため震えてしまうことを挙げる。そこで本機には、ジャイロセンサー、加速度計、磁気センサー、GPSといった4つのセンサーを搭載し、特許取得済みのキャリブレーション技術を組み合わせている。

苦労した点として、地球の磁力(地磁気)が弱いことから、少しのノイズで認識が乱れてしまう問題があったという。これを数学的・物理的なアルゴリズムを用いて技術的にズレを減少させつつ、ユーザーがちょっとしたズレを直感的かつシンプルな方法で手動補正(キャリブレーション)するという、ハイブリッドな方法を採用することで実現できたそうだ。
キャリブレーションを行うには、キャリブレーションボタンを押して表示を固定し、表示をランドマークの上に重ねてボタンを離すのみ。本体にはモードボタンも搭載し、押すことでデイモード、ナイトモード、コンパスモードを切り替えられる。AR表示をオフにするボタンも備えている。

ディスプレイにはOLEDを採用。表示色は赤色のみで、解像度は960×960px、カバー範囲は85%となる。バッテリー容量は1,100mAhで、約5時間または1,000回の起動が可能だ。充電については本体の接眼レンズ側にあるUSB-C端子から行える。センサーとして、コンパス、ジャイロスコープ、磁力計、環境光センサーを搭載。日本語のほか、英語、仏語、ドイツ語をサポートする。
口径は50mm、射出瞳径は5mm、実視界は6.5°。瞳孔間距離は56〜72mmで調整できる。本体素材はガラス繊維強化軽量プラスチックとなっており、プリズムにはBaK4を採用。IP54の防塵防滴、-10〜55℃の使用温度(推奨保管温度は10〜20℃)に対応する。外形寸法は190W×70H×185Dmm、質量は1.1kg。

今後のロードマップとして、数週間以内でベータテスター(約60名)とともに、初めてのユーザーでも迷わない初期設定のユーザー体験をブラッシュアップしていくとのこと。星空観測コンテンツを拡充し、より多くの観測対象、厳選された観測プレイリスト、より詳細なガイダンスを追加するという。

その後数週間以内には、昼間の使用における情報の視認性を向上させ、多様な環境下でも簡単にキャリブレーションが行えるよう、視覚的なランドマークや参照パターンを追加。名所、史跡、建造物など、より多くのポイント・オブ・インタレスト(POI)をさらに拡充するという。
そして今後1年以内には、人工衛星、航空機、船舶などのリアルタイムトラッキング機能が順次追加される計画となっている。オープンAPIを備えたソフトウェア開発キット(SDK)の公開も予定しているそうだ。
