横浜DeNAベイスターズやコクヨとの検証加速へ
ソニー、音と振動で雑念を遠ざけて“本番前の状態”を整える「NOUS ARE」

ソニーフィナンシャルグループは、ソニーのハプティクス技術(触覚提示技術)を活用することでユーザーの “状態づくり” が行える「NOUS ARE」(ノウスアレ)を開発している。都内で発表会が実施され、これまでの検証結果と今後の取組みが明かされた。
NOUS AREは、音楽による深い没入感によって、頭の中の雑念や本番前のプレッシャーを遠ざけて、気持ちを切り替えていくことを目指したもの。本番前の7分間で、高めたい、鎮めたい、流れに乗りたい、といった状態を選んで再設計できるとしている。これにより、スポーツの試合、ライブや舞台、商談などの本番で実力を発揮するための「本番前の状態設計」を提案していく。

同社プロジェクト責任者の赤羽祐哉氏は「本番前では経験のある彼らでもネガティブなことが止まらない、緊張しすぎて怖さすら感じる」「経験や能力があっても、その瞬間の心身の状態が乱れていれば、力を発揮できない」と述べ、NOUS AREを使うことで「準備したことを本番でそのまま出せる」ことを目指していると話す。
本システムには、ソニーが長年培ってきたハプティクス技術を活用している。開発した椅子型ハードウェアには、アクチューエーターと、体験空間に合わせて設計された専用スピーカーを搭載する。再生するコンテンツは既存の音楽にハプティクスを付与して独自に制作したもので、アプリを通してユーザーがコンテンツを選択できる。

赤羽氏は「必要なのはその時の自分に必要な状態を捉え、意識的に切り替えていくこと」と説明する。例えば、短距離や重量上げは高揚感が重要であり、ゴルフのパットやアーチェリーなどは落ち着いていたほうがパフォーマンスが上がりやすいとのこと。野球では気持ちが上がれば打てる選手もいれば、平常心のほうが打てる選手もいるように、実力を発揮しやすい状態は人や目的によって異なるそうだ。

そこでNOUS AREには、RISE、COOL、FLOWといった3つのモードを搭載。RISEは気持ちや活力を高めて本番へ向かうモード(アップテンポ/力強いハプティクス)、COOLは緊張や高ぶりを落ち着かせて冷静に本番へ向かうモード(ローテンポ/繊細なハプティクス)、FLOWは気持ちを適度に高めつつ落ち着いて目の前のことへ向かうモード(7分間でRISEからCOOLに変化)となっている。

NOUS AREの体験時には心拍センサーを内蔵したクッション型デバイスを抱えることで、体験中の心拍の変化を可視化できる仕組みも搭載。クッションにもアクチュエーターを備えている。また、椅子部分はアクチュエーターと制御部分をモジュール化してアプリで操作することで、どのようなチェアにも適切な形態で展開できるとしている。

赤羽氏は「能力や経験だけでなく、その瞬間の状態にも左右されるのではと考えたことが開発の出発点」だと述べ、その背景には前職で準備してきたことを本番で十分に発揮できなかった経験があったと説明。その後アーティストなどに話を聞くなかで「本番前の状態をどう作るか」は多くの人に共通する課題だと感じ、新規立ち上げ制度に企画をゼロから提案、2年間でここまで進めてきたと語った。
なお、本システムに搭載する “音に没入するハプティクス” は、東京大学の大黒准教授の指導のもと、自社内での研究開発を2年ほど重ねてきた。論文も共著で執筆し、没入・フローの高まり、音楽の一部になった感覚、ライブ会場の感覚などを学術的にも検証しているとする。

アスリート領域においては、2026年5月に締結した横浜DeNAベイスターズの契約に基づき、実際の競技現場での活用可能性を検証。2025年の秋期キャンプから活用可能性を検証を行い、一定の可能性が見えたことから、共同してNOUS AREの価値づくりを進めていくことになったそうだ。現在、横浜スタジアム内のブルペン、トレーニングルーム、ファーム施設のDOCK OF BAYSTARSに合計3台が設置されている。

またアーティスト領域においても、スタジオに設置し、パフォーマンス前の利用シーンを中心に有効性の検証を開始しているという。今後、コクヨとの共同開発のもと、オフィス環境における取り組みを開始していく。
コクヨとの取り組みでは、初めての椅子型プロトタイプ「(仮称)コンディショニングチェア」を共同開発。プレゼンテーションや商談といった働く現場において「本番で実力を発揮することに貢献」することを目指し、「実際のオフィスでの検証を重ねながら本当に使う意味のある体験に磨き込んでいきたい」としている。

今回のシステムを開発しているソニーフィナンシャルグループは、ソニーグループの一員として、生命保険を中心に、銀行、介護事業、ベンチャーキャピタルといった幅広い事業を手掛けている。同社では、経済的な健全性「資産寿命」、自分らしく生きる「感動寿命」、生きる土台となる「健康寿命」により、「感動できる人生を、いっしょに。」というビジョンを目指していくという。

同社執行役員の長潟嘉一氏は、「自分らしい人生にいかに長く寄り添っていけるのか」という課題に対し「従来の金融サービスでは十分ではない」と述べ、「金融の枠を超えてこれまでになかった新しくユニークな価値」が必要だとする。NOUS AREは「日々のコンディションを整え、一人一人が本来持っている力を発揮する」ことができ、「その先にある自分らしい生き方を支える可能性を秘めた取り組み」だと評価した。
