今のところ市場は過剰反応ぎみ
中国が「DUV露光装置」量産開始の報道。オランダASMLの脅威となるか

中国が浸漬式DUV(Deep Ultraviolet/深紫外線)露光装置の国産量産を始めたと報じられている。これが事実であれば、中国の半導体自立化に向けた重要な前進であり、この市場で圧倒的な存在感を持つオランダのASMLにとっては長期的な競争リスクとなる。
ニュースメディアThe Information(CNBC経由)は今週初め、匿名の中国企業がDUV露光装置の量産を開始し、今年中に中国の主要半導体メーカーへ納入される見込みだと報じた。これを受け、ASMLの株価は2日間で約10%下落し、時価総額は600億ユーロ超が失われた。
Reutersによると、この企業は上海の国有系企業で、2026年に約5台、2027年には約20台を生産する計画だという。ただし、現時点の中国製装置は性能や信頼性でASMLに及ばず、量産投入前には追加試験が必要とされる。ASMLは2025年に浸漬式DUV露光装置を131台出荷しており、生産規模でも大きな差がある。
浸漬式DUV露光装置は、半導体に回路を書き込む「光の印刷機」の一種であり、比較的波長の長い紫外線を利用する。ASMLの場合、主に193nmのArFレーザーを採用している。
一方、それより一世代新しいEUV(Extreme Ultraviolet/極端紫外線)は13.5nmという極めて短い波長を用い、2~3nm級の最先端プロセスの製造に使われる。レンズではなく反射鏡で光を扱い、その光をほぼ完全な真空中で制御しなければならない。
さらに、光源、超高精度光学系、マスク、レジスト、粒子制御、ステージ制御など、あらゆる要素技術を高い水準で成立させなければ量産は不可能であり、製造難度はDUVとは比較にならないほど高い。中国は、現時点ではその入り口にも立っていないといえる。
もっとも、中国が浸漬式DUV分野でASMLに実際の打撃を与えられるかどうかは、慎重に見極める必要がある。重要なのは装置を開発できるかではなく、ASMLと同等の歩留まりを実現できるかどうかだ。歩留まりが劣るのであれば、企業が中国製の装置を選ぶ理由はほとんどない。中国企業であっても、ASML製装置の歩留まりが大幅に優れているのであれば、そちらを採用する方が有利である。
一方、中国製装置がASMLと同等の歩留まりを実現できれば、ASMLは潜在顧客の相当数を失う可能性がある。ASMLは米国主導の輸出規制によりEUVと一部のDUV装置を中国へ販売できないものの、それでも2026年には中国向け売上高が全体の約20%を占める見通しとされている。
つまり、今回の動きが意味するのは、短期的には「ASMLの中国本土向けDUV市場が中長期的に侵食されるリスクが生じた」という段階にとどまる。その意味では、市場の反応はやや過剰だったとみられる。
それでも、中国企業はすでにDUVの多重露光によって7nm級の先端ロジック半導体を量産している。今後DUV露光装置の内製化が進めば、中国の海外技術への依存度はさらに低下し、米国主導の輸出規制の効果も徐々に薄れていく可能性がある。
- Source: CNBC Reuters(1) (2)
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