「価格は双方の合意」というロジック

任天堂、トランプ関税が還付されても返金しないと主張

多根清史

Image:Matthieu Tuffet/Shutterstock.com

任天堂は2026年、米トランプ政権が課した「相互関税」は違法だとして米政府を提訴し、支払った関税の全額を利息付きで還付することを求めている。同社が関税コストを理由に米国で製品を値上げしたことを受け、米国のゲーマー2人は「政府から還付を受けた分は顧客に還元すべきだ」として集団訴訟を起こしていた。

その訴訟の却下を求める提出書類の中で、任天堂が「関税の還付を受けたとしても、その分を顧客へ返還する法的義務はない」と反論していることが明らかになった。

今年2月20日の最高裁判所の判決により、任天堂は米政府を相手取った訴訟を起こすことが認められた。同社は、ゲーム関連製品を米国へ輸入する際に負担した追加コスト(関税)について、払い戻しを受ける権利があると主張している。

米政府は、関税による価格上昇分について企業からの返金請求を認めている。それを受けて4月、カリフォルニア州在住の原告2人は、関税による値上げ後に任天堂製品を購入したとして集団訴訟を提起した。「任天堂は違法と判断されたトランプ関税の還付を受けながら、その関税分を価格に上乗せして消費者から回収しており、結果として二重取りになっている」と主張したのである。

米ゲームメディアGame Fileによると、任天堂はユーザーに対して何ら支払う義務はないとし、「原告らは、関税に関する法的状況が途中で変化したという理由だけで、払い戻しを受ける権利はない」と反論しているという。

任天堂の担当弁護士は最新の提出書類で、「任天堂またはその販売店は各製品の価格を設定し、消費者はその価格を支払う価値があるかどうかを判断した。任天堂製品を購入した人々は、自らが交渉し支払った対価どおりのもの、すなわち双方が合意した価格でゲーム機、ゲームソフトおよび/またはアクセサリーを受け取った。原告らが支払った金額は、彼らが望み、実際に受け取った商品の購入代金である」と述べている。

値上げ当時、任天堂はその理由を「市場環境の変化」と説明していた。これはトランプ大統領による大規模な「相互関税」を暗に示したものだった。米政府は関税が経済にとって有益であると主張し続け、さらには海外諸国が関税を負担するとの誤った説明まで行っていた。

しかし、こうした輸入関税の負担は最終的に消費者へ転嫁されることになった。それを「トランプ関税上乗せ価格」として明示しようとした米Amazonは、トランプ氏から直接電話を受け、急きょ方針を撤回したと報じられていた。

任天堂の主張は、企業は追加の輸入関税を支払わなくなった後でも、自ら値下げする責任があるとは考えていないことを改めて示している。それだけでなく、消費者は値上げ後の価格で購入した分について返金を期待することもできない。

任天堂は日本でも5月25日からSwitch 2を値上げしている。その理由について古川俊太郎社長は「様々な市場環境の変化」と説明し、要因の1つとして「メモリを中心とした部材価格の高騰」を挙げていた

仮に今後メモリ価格が落ち着いたとしても、任天堂がゲーム機価格を引き下げない可能性は十分にありそうだ。

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