車内映像は削除済み、車外映像はボカし処理

自動運転タクシーで逃走した泥棒、半年経っても捕まらず。プライバシー保護が捜査の壁に

多根清史

Image:Tada Images/Shutterstock.com

米サンフランシスコの地元紙SF Chronicleの報道によると、ある泥棒が自動運転タクシー(ロボタクシー)のWaymoを利用して大量のヨガウェアを盗み、そのまま逃走に成功したとみられている。この事件は今年1月に発生したもので、容疑者はいまなお逃走中とのことだ。

2026年1月、容疑者はWaymoのロボタクシーに乗ってヨガスタジオに現れた。車を外で待機させたままスタジオ内に侵入し、3分足らずの間に店内の商品を根こそぎ盗み出した後、Waymoのトランクに盗品を積み込み、そのまま同車で逃走したという。

Waymoは車内外に高精細カメラを多数搭載しており(最新モデルでは29台)、利用にはクレジットカード番号と紐付いたアカウントが必要である。そのため警察は、事件は簡単に解決できると考えていたという。しかし、事件から約半年が経過した今なお、容疑者の特定や逮捕には至っていない。

理由はいくつかある。1つは、Waymo車両があらゆる映像を記録している一方で、それらを永久保存しているわけではないことだ。警察が捜索令状を取得した時点では、すでに該当する車内映像は削除されていたという。また、車両外部のカメラ映像は提供されたものの、「プライバシー保護のためぼかし処理が施されていた」ため、警察は容疑者を特定できなかった。

加えて、Waymoから提供されたユーザーアカウント情報や支払いデータも、容疑者の実名や現住所の特定には結び付かなかったとされる。一般的に、犯罪者が偽名や使い捨て携帯電話を利用することは珍しくないためだ。

この一件は、「自動運転車による常時監視への懸念」に対し、プライバシー保護対策が有効に機能していることを示す一方で、その対策が結果的に警察の捜査を妨げる形になったという、テクノロジーと法執行のジレンマを浮き彫りにした事例と言える。ただし、Waymoが古い映像をいつ削除しているのかについては、依然として不明な点が残っている。

また、Waymoが犯罪の「逃走車」として利用されたのは今回が初めてではない。過去には、食料品店を強盗した犯人がWaymo車両を利用したこともあったが、その犯人はほぼ即座に逮捕されている。そもそもWaymoのソフトウェアは警察車両のサイレンや信号を認識し、必要に応じて適切に停車する仕組みを備えている。そのため、逃走中の犯人にとっては必ずしも理想的な逃走手段とは言えないようだ。

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