アンチチートで検出は困難

MSIのAIゲーミングモニター、「ハードウェアチート」と批判されたAI機能を削除

多根清史

Image:MSI

MSIは今年初めのCESで披露したAI搭載ゲーミングモニター「MEG X」につき、Computex 2026で公開した最新版では、事実上のAIチート機能を取り下げる方向へ舵を切ったと報じられている。

CES時点では、MEG Xは6つのAI機能を備えると発表されていた。しかし、そのうち3つは「露骨なチート機能だ」との批判を集めていた。

  • AI Tracker:画面内のプレイヤーキャラクターを検出してハイライト表示する(敵強調表示)
  • AI Goggle:フラッシュバン(閃光)効果を打ち消すアンチフラッシュ機能
  • AI Scope:敵に向けて自動的にズームするスコープ機能(オートスコープ)

MEG Xは当初、「真のAIゲーミングモニター」として宣伝されていた。しかし、これらの機能はゲームプレイ支援の域を超えているとして、発表直後から疑問の声が上がっていた

実際、これらをPvP(対人戦)で使用すれば、ゲームバランスそのものを揺るがしかねない。現在のアンチチートシステムはソフトウェア側の不自然な挙動を監視する仕組みが主流だが、MEG Xのようなモニター内部処理や映像後処理は検出が極めて困難であり、「ハードウェアチート」に当たるとの指摘もあった。

MSIはCES会場で「マルチプレイヤーや競技ゲームでは使わないでください」と冗談交じりに説明していた。また、マーケティング資料にも「これらのAI機能はシングルプレイや練習での利用を推奨する」と記載されていた。もっとも、ユーザーがそれに従う保証はなく、結果として大きな議論を呼んでいた。

その後、Computex 2026で公開された最新版では、問題視されていた3機能が消えていたという流れである。

一方で、次の3つのAI機能は引き続き残されている。

  • AI Vision+:映像の暗い部分を明るく表示する
  • AI Scene:映像内容に応じて画質プロファイルを自動で切り替える
  • AI Gauge:画面内容に合わせてRGBライトバーの表示を変化させる

ただし、ComputerBaseの読者アンケートでは、AI Vision+についても回答者の約54%が「チートに該当する」と考えているという。

残されたAI機能だけではインパクトが弱いと判断したのか、MSIは新たに3つの機能も追加している。

  • AI Audio Scene:ゲーム音声を解析し、ジャンルや状況に応じてイコライザー設定を自動的に切り替える
  • AI Crosshair:モニター側で表示する固定クロスヘア(照準)の色を背景に合わせて変更する機能。さらに「ナイトビジョン」風モードも搭載され、クロスヘア周辺を暗視装置のように表示できるとされる。このため、競技ゲームでの悪用を懸念する声もある
  • AI Super Resolution:フルHD映像を自動でアップスケーリングし、4Kに近い画質へ変換するとされる超解像機能

AIはすでにPC本体だけでなく、モニターを含む周辺機器にも急速に浸透しつつある。今後はAI機能の進化と並行して、それを前提としたチート検出技術の発展も求められるかもしれない。

関連キーワード: