モデル蒸留したことも部分的に肯定

イーロン・マスク、xAIがOpenAIモデルでGrokを訓練したことを認める

多根清史

Image:lilgrapher/Shutterstock.com

イーロン・マスクは2026年4月30日(米現地時間)、カリフォルニア州の連邦裁判所での証言において、自身のAIスタートアップであるxAIが、OpenAIのモデルを用いてGrokを訓練したことを認めたと報じられている。

特に焦点となっているのは「モデル蒸留」である。これはAI業界で一般的な手法であり、より大規模なAIモデルを「教師」として、より小規模なAIモデルに知識を伝達する仕組みである。企業が自社モデル同士で用いるケースも多いが、競合他社のモデル性能を模倣する目的で使われる場合には問題視されやすい。

証言台でモデル蒸留について知っているか問われたマスクは、「あるAIモデルを使って別のモデルを訓練することだ」と説明した。さらに、xAIがOpenAIモデルを蒸留したことがあるか問われると、「一般的にすべてのAI企業がそのようなことを行っている」と発言。それがxAIにも当てはまるのかと追及されると、「部分的にはそうだ」と認めた。

さらに追及されると、マスクは「自分たちのAIを検証するために他のAIを使用するのは標準的な慣行である」と述べたとされる。

近年、モデル蒸留の利用は拡大しており、それに伴いAI企業間の対立も激化している。何が合法で、何が利用規約やポリシー違反に当たるのかという線引きが曖昧であるためだ。OpenAIおよびAnthropicは、中国企業による蒸留を非難しており、前者はDeepSeekへの懸念を示し、後者はDeepSeek、Moonshot、MiniMaxを名指ししている。またGoogleはこれを「蒸留攻撃」と位置づけ、「利用規約に違反する知的財産の窃取手法」と定義し、その防止策を講じている

一方でAnthropicの公式ブログでは、「蒸留は広く用いられている正当な訓練手法である。最先端のAI研究機関は、顧客向けにより小型で低コストなモデルを提供するため、自社モデルを日常的に蒸留している。しかし同時に、蒸留は不正な目的にも利用され得る。競合他社がこれを用いれば、独自に開発する場合と比べて、はるかに短期間かつ低コストで強力な能力を獲得できてしまう」と指摘している。

この証言は、マスクがOpenAIに対して約1340億ドルの損害賠償を求めている訴訟の3日目に行われたものである。

マスク側はOpenAIが当初の非営利ミッションを放棄したと主張しているが、一方で証言では、自身の3800万ドルの寄付に関する条件文書や、OpenAIが営利目的の関連会社を設立できないとする文書は存在しないことも認めている。また、予測市場であるPolymarketでは、マスクが勝訴する確率は現時点で42%と見積もられている

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