コツコツ改良を重ねて大ヒット製品に

アップル50周年で明かされた舞台裏。クックCEOが語るiPod・iPhone誕生の決断

多根清史

Image:YouTube/WSJ

アップル50周年を記念する企画の一つとして、ティム・クックCEOがThe Wall Street Journal(WSJ)の記者とともに社内アーカイブ資料や初期のプロトタイプを見て回る動画が公開されている。

クック氏は「この多くは、50周年の準備を進める中で初めて目にしたものである」と述べている。動画内ではApple IIの特許、初期のiPodやiPhoneの試作機、Apple Watchなど、門外不出の数々を見ることができる。

そこで語られたクック氏の証言も、非常に興味深い内容である。

iPodとサプライチェーン

初代iPodについて、「ポケットに1000曲」というコンセプトが当時どれだけ革命的だったかを、車載の5枚CDチェンジャーとの対比で説明している。

さらに2000年代に入ると、3か月で1400万〜1500万台を出荷する規模に達したという。「精度と品質を保ちながら、一切のミスが許されないサプライチェーンの構築」は極めて困難であったと述べている。当時、クック氏はワールドワイドオペレーション担当上級副社長として、製造・在庫管理・物流全体の改革を担っていた。

なお、最初にiPodで聴いた曲はビートルズの「Hey Jude」であったと明かしている。

iPhoneのプロトタイプと「ガラス化」決断

iPhoneの初期プロトタイプとして、まな板サイズの巨大な回路基板を示しながら、「まずはすべてが動作することを証明する必要があった」と説明している。

発売前には、社内で使用していた試作iPhoneがポケット内の鍵や小銭で傷だらけになる問題が発生した。これを受け、スティーブ・ジョブズ氏が「(プラスチックに替えて)ガラスを載せる」決断を下し、2007年1月から6月にかけて、“マン・オン・ザ・ムーン・プロジェクト”(アポロ計画)級の大規模な仕様変更が行われたという。

もっとも、当初はiPhoneが「数十億台売れる」とは想定しておらず、「その成功は自分たちを含め、ほぼ全員を驚かせた」と振り返っている。

Apple Watchと「一夜の成功」の正体

初期のApple Watchプロトタイプとして、iPhoneから給電される試作品を前に、クック氏は「ここにとてつもないものの始まりがあった」と語っている。当初は現在のようなヘルスケア特化の構想はなく、その後ECG(心電図)などの健康機能を追加していく中で、「健康の守護者」かつフィットネスコンパニオンへと進化したとされる。

また、iPod、iPhone、Apple Watchはいずれも発売直後から爆発的に売れたわけではなく、継続的なイノベーションと機能追加を経て、結果として「一夜の成功」に見えるようになった製品であると指摘している。

この見方は史実とも整合する。いずれも新たな市場を切り開いた製品であり、当初はニッチながら十分な成功を収めていたが、世代を重ねるごとに洗練され、最終的には巨大なグローバル市場へと成長した。たとえばiPhoneの中核機能であるApp Storeも、初代iPhoneの発売から約1年後に導入されたものである。

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