iPhoneのハードウェアを他社AIに開放してサブスク手数料で稼ぐ見通し

アップル、AI競争から“撤退”か。iPhoneをAIハブ化する新戦略

多根清史

Image:Ascannio/Shutterstock.com

アップルは、自社のAI技術がOpenAIやGoogle、Anthropicなど他社におくれを取っていることを認識し、本業である「収益性の高いハードウェアの販売+その上で動作するサービスから手数料を徴収」というモデルへ立ち戻ると、Bloombergが報じている。

同社の内部事情に詳しいMark Gurman記者は、ニュースレター「Power On」最新号においてAI戦略の転換を解説している。すなわち、他のプラットフォームとの「AI軍拡競争」から距離を置き、新たな二本柱の戦略へ移行するというものである。

歴史的に、アップルの「メッセージ」や「マップ」、「写真」といった純正アプリは単独で収益を生み出すものではなく、iPhoneなどハードウェア製品の販売を促進する役割にとどまってきた。一方で、AI競合他社はサブスクリプションや有料アプリを通じてAIそのものを収益化している。アップルはすでに、「Siriやその他のAI技術に対して料金を支払うユーザー」はほぼ存在しないこと、またApple Intelligenceを収益源へ転換する好機は過ぎ去ったことを理解しているとされる。

新戦略の一つは、ユーザーがAndroidへ流出しないよう、iOSに十分なAI機能を組み込むことである。これはクラウドベースのGeminiをSiriのバックエンドに採用することで実現される見通しであり、この提携自体はすでに正式発表されている。さらに、Geminiの蒸留によってオンデバイスAIの強化にまで踏み込むとの見方もある。

もう一つの柱は、SiriやApple Intelligenceをサードパーティサービスに開放し、ユーザーが自由に選択・統合できるようにすることである。このアプローチは、アップル製ハードウェアの価値を活かしつつ製品のカスタマイズ性を高め、同時にエコシステムの主導権を維持することに繋がる。

具体的には、iOS 27に追加される新機能「Extensions」を通じて実現される見通しだ。これにより、ChatGPTやGemini、ClaudeといったAIチャットボットをダウンロードし、Siriと統合して利用できるようになる。

さらに、これらAIツール専用のセクションがApp Store内に設けられる予定とされる。いわば「App Store内のAIアプリストア」であり、各社のサブスクリプションから30%の手数料を徴収する予定だという。アップルはAI各社を競わせることで、iPhoneやその他デバイスの魅力を高める構図を描いているといえる。

アップル自身のAI技術は現時点で高い完成度にあるとは言い難いが、AIを動かすハードウェア性能には強みがある。実際、Mac miniやMac Studioは生成AIブームを背景にクリエイター需要が急増していると報じられている。この構図をiPhoneなどのモバイル製品にも持ち込み、従来のApp Store手数料ビジネスを通じて収益へと結びつける狙いのようだ。

その意味で、やはりアップルはハードウェア企業である。Gurman記者も、ティム・クックCEOの後継者として、ハードウェアエンジニアリング責任者ジョン・ターナス氏が有力視されている点を指摘している。

関連キーワード: