Vision-Sから6年、今年後半に発売予定でした

ソニーホンダ、PlayStationも遊べる電気自動車「アフィーラ」中止

Munenori Taniguchi

Image:Sony Honda Mobility

ソニーとホンダの合弁会社ソニーホンダモビリティ(SHM)は、初の製品となる電気自動車「アフィーラ1」および第2弾車種の開発と発売を中止すると発表した。

アフィーラはソニーが初めて自動車開発に関わり、ホンダとの提携によって「パーソナルモビリティとデジタルメディアの究極の融合」を目指すEVとして開発が進められていた。後部座席にはPlayStation 5/4のリモートプレイにも対応するディスプレイが搭載され、今年後半に発売予定だった。

アフィーラ1は、もともとは2020年のCESでソニーがサプライズ発表した「Vision-S」と称するコンセプトカーだった。当時ソニーのCEOだった吉田憲一郎氏は、Vision-Sを「未来のモビリティへの当社の貢献を体現するもの」だと説明した。

Vision-Sは発表時点で、すでに走行可能な状態のプロトタイプだったと言われている。そしてそれは、エンターテインメントとエレクトロニクスの技術力を、電気自動車に統合するショーケースの役割を果たすものだった。

ソニーがVision-Sを本気で発売するつもりだったかどうかは不明だが、2022年にホンダがこのプロジェクトに協力することが発表され、その翌年には、Vision-SはAfeelaブランドに生まれ変わった。

ただ、電気自動車を取り巻く環境はその間に大きく変化した。以前は2030年~2035年ごろには自動車市場の少なくとも半分以上がEVに置き換わっていると予想されていたところが、中国国内EV市場が失速傾向となり、米国では第2期トランプ政権が誕生したことにより環境政策が急変、自動車各社は電動化方針の見直しを迫られることになった。

結果、最新の自動車市場予測では、基本的に内燃エンジン車から電動車への移行が進むことに変わりはないものの、BEV(完全電気自動車)の普及ペースにはブレーキがかかっている。最新の予測では2030年時点でも世界販売の約3割にとどまるという(一方でハイブリッド車は予測より普及ペースが伸びるとされている)。

ただ、アフィーラ1がどれほど売れるかについては以前から疑問符も付いていた。というのも、すでにEV市場にはRivianやLucid Motorsなど、優れたEV技術を持ちブランドイメージも確立した強力なライバルが存在しており、そこに「タイヤ付きスマートデバイス」というコンセプトを持ち込んでもいまさら感は拭えない。

米国で自動車会社を新規に立ち上げ持続させていくことがどれだけ困難かは、過去10年のEVメーカーの動向で証明済みだ。そのなかでアフィーラの魅力は、Vision-Sが発表された当時からはかなり薄れて来ていた。今年1月のCESでは世界市場で売れ筋となっているSUVタイプも発表されたが、トランプ関税米国におけるEV補助金や充電インフラ普及への優遇政策も廃止されるなど、EV市場への逆風は数年前には予想もできないほど強まった。

そんな状況から、製品ラインナップをすべてEVに転換すると発表していた自動車メーカーの中には方針を転換して内燃エンジン車の継続を表明するところも出てきている。ホンダも2040年に100%EV/FCV化を掲げていたが、今月にはそれを見直す方針を明らかにしている。

さらにホンダは今月、米国市場で今年発売予定だったホンダ0シリーズEVとアキュラRSXの投入を、トランプ関税と中国との競争激化の影響により中止すると発表した。これにより、ホンダの「特定の技術と資産」を活用して生産する予定だったアフィーラ1の生産も実質不可能になった。

SHMの発表文では、同社の今後について「当初の目的と最新のEV市場環境を考慮しつつ」「引き続き協議・評価を行い、SHMの将来の方向性、中長期的な位置づけ、そしてモビリティの未来への貢献について、できるだけ早期に共同で発表する予定」と述べている。

「未来のモビリティへのソニーとしての貢献を体現」したEVの夢は、まだ完全には潰えてはいない。だが、限りなく低くなってしまったことは否めない。

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