原理的には自然蒸発しますが、いつ読めなくなるかは…?
フラッシュメモリ通説「通電しなければ半年~1年で消え始める」は本当か? 6年目の実験結果

「USBメモリに重要なデータを保管してはならない」。この考え方は特に企業内では常識だが、その理由は主に、USBメモリが小さいために紛失しやすいからだ。だが、USBメモリを含むフラッシュメモリの仕組みに詳しい人ならば、その動作原理上、定期的に通電しなければ、そこに保管されたデータがいずれ消えてしまうこともまた常識として知っているだろう。
USBメモリを家族の写真や動画のアルバム代わりにしていて、あるときそれを見返そうとしたら、データが消えていたり、壊れて読み込めなかったりした経験を持つ人は、ある程度いるのではないだろうか。日本ではあまり聞かない気がするが、海外ではフラッシュメモリのデータ保持期間は「通電しなければ半年~1年」しかないというのが通説であるようだ。Redditユーザーのザカリー・ヴィンス氏は、2020年の新型コロナウイルスのパンデミックのさなかに(あまりに暇だったのか)、実験でそれを確かめてみようと思い立ったという。
ヴィンス氏は、キングストン製メモリ「DataTraveler SE9 32GB USB 2.0」の同ロット品を10個購入し、その全部にランダムなデータをブロック書き込み方式でみっちりと書き込んだ。そしてそれらをすべてクローゼット内の箱に入れて保管し、年を重ねるごとに1個を取り出しては、データが完全に保持されているかを確認することにした。
また、データ保持を確認したUSBメモリは、チェック後に同じデータを上書きしてまた保管し、以後は毎年データ保持の確認と上書きをする。つまり、1度チェックと上書きをしたUSBメモリは、以後は毎年チェックと上書きをしていく。そのため、年を経るにつれ、その年にチェックするUSBメモリの数は増えていく格好になる。
さらに、ヴィンス氏はより長期に保存状態を確認するため、未チェックのUSBメモリを持ち出す年(エラーがないと仮定)を実験開始から1年後、2年後、3年後、4年後、6年後、8年後、11年後、15年後、20年後、27年後に設定した。これで最長27年間はフラッシュメモリがデータを保持できるかどうかを確認できる。
時は流れて2026年(6年後)。ヴィンス氏は5回目となるUSBメモリのデータを確認作業を実施した。そして、過去6年間でデータが破損したUSBメモリは「ひとつもない」という現時点での結果を得た。「ヴィンス氏は2年後(実験開始から8年後)にまた報告する」と述べている。
ヴィンス氏の実験だけを見れば、フラッシュメモリのデータ寿命が「通電しなければ半年から1年で壊れ始める」という通説は、どうやら都市伝説の一種であるようにも思える。
だが、フラッシュメモリの保管場所は常にクローゼットの箱の中とは限らない。
別のRedditユーザーでCarnildoと名乗る人物は、量販店で投げ売りされていたUSBメモリを3個購入し、それらすべてにJPEG画像5000枚、合計で約2GBのデータを書き込んだ。そして、そのうちひとつを空調設備のない「冬季の大半で氷点下」になる屋根裏部屋に保管し、残りのふたつは空調設備のある部屋に置くことにした。
さらに、空調設備のある部屋のUSBメモリのうちひとつは、定期的にPCで画像を読み込む操作を行ったが、残りの2つには手をつけなかった。
そして、1年後に3つのUSBメモリのデータ保持状況を確認したところ、定期的にアクセスしていたUSBメモリでは6枚の画像が破損していたのに対し、屋根裏に保管したものは138枚、空調設備のある部屋で手をつけなかったものはなんと773枚の画像が破損していたと報告した。
破損の発生状況としては、4KBの書き込みブロック全体が完全に、あるいはほぼ完全にランダム化され、画像上は破損したブロックのデータを使用していた部分が切り取られたように表示されなくなっていたという。また1か所だけ例外的に、破損が1ビットの反転と歪んだ色の縞模様という形で現れた。
この実験結果からは、フラッシュメモリが保管された場所の環境状態によって、そのデータ保持状況に差が現れた可能性が考えられる。だが一方では、(投げ売りされていた)USBメモリそのものの品質のばらつきが影響している可能性もあるだろう。
フラッシュメモリメーカーは、そのチップに対して55℃で10年間という環境をシミュレーションする品質保持試験を行うことが、JEDEC JESD47規格で求められている。だが、この規格はベンダー契約やQVL(合格部品リスト)認定、自動車や航空機など、一部の厳格な条件を満たす必要がある用途においては明示的に準拠が求められるが、一般的な消費者向けUSBメモリ、特にワゴンセールになるノーブランド品にはまず適用されていないと考えておく方が良い。
Carnildo氏が使用した「定期的に読み取り」たくなる5000枚のJPEG画像がどんな類いのものだったのかも気になるところだが、大切なデータならば、投げ売りのUSBメモリには保存すべきではないのは、実験をしなくても明らかなことと言って良いだろう。たとえ重要なデータでなくとも、信頼できるメーカーの製品を使うようにするだけで、つまらないデータ消失トラブルを回避できる可能性が高まるはずだ。
余談だが、USBメモリやSDカード、SSDなどのフラッシュメモリはその特性上、読み書き回数が限られており、頻繁に書き換えが発生するような使い方を続けると予想外に早く寿命が尽きてしまうことがある。フラッシュメモリにはセル毎でデータ表現可能な保存電圧状態の数によってQLC NAND(1セルあたり4bit)、TLC NAND(同3bit)、MLC NAND(同2bit)、SLC NAND(同1bit)といった種類があり、ビット数が多いものほど容量単価が安くなる一方、読み書きの耐久性が低くなる傾向がある。
また、この記事はフラッシュメモリに関する内容だが、電源が供給されない長期保存においては、フラッシュメモリよりもハードディスクのほうが耐性が高いとされている。そして企業や研究用途などではさらに、耐久性の高い磁気テープを長期保存に使用していることも多い。磁気テープストレージの場合、メーカー公称値として30~50年の保管年数をうたっているものもある。
- Source: Zachary Vance(Reddit) Carnildo(Reddit)
- via: Tom's Hardware
