日本でも政治家のディープフェイク広告が蔓延

YouTube、AIディープフェイク追跡ツール拡大。政治家や記者も対象に

多根清史

Image:ZA Media/Shutterstock.com

YouTubeは、AI生成のディープフェイク検出ツール「likeness detection(類似検出)」を、政治家や政府関係者、ジャーナリスト向けに拡大するパイロットプログラムを開始した。これにより、これらの人々は自分を模したAI生成ディープフェイクを追跡できるようになる。

このツールはすでにYouTubeパートナープログラムのクリエイターに提供されている。著作権素材を検出する仕組み「Content ID」と似ているが、違いは人の顔を検出する点にある。一致が見つかった場合、プログラムに参加している個人はYouTubeにコンテンツ削除を要請できる。

ただしYouTubeによれば、すべての要請が承認されるわけではない。削除の判断はYouTubeのプライバシーポリシーに基づいて行われ、パロディや風刺といったコンテンツには例外規定が設けられている。

「YouTubeには表現の自由を守ってきた長い歴史がある。そこにはパロディ、風刺、政治的批評も含まれる。世界の指導者の動画が明確なパロディであれば、そのまま残る可能性が高いだろう」と、YouTubeの政府渉外・公共政策担当副社長レスリー・ミラー氏は述べている。「私たちは、保護しようとしている市民的議論を抑圧しないよう、すべての削除要請を長年のプライバシーガイドラインに基づいて慎重に評価する」とのことだ。

このプログラムに参加するには、本人の動画と政府発行の身分証明書の提出が必要である。YouTubeによれば、これらのデータは類似検出機能のためにのみ使用される。また、利用者はいつでもプログラムから退出でき、その際にはデータ削除をYouTubeに要求できる。

クリエイター向け製品担当副社長アムジャド・ハニフ氏は、これまでのところ、このポリシーに基づいて削除を求められたコンテンツの量は「実際には非常に少ない」と述べた。

さらに「多くの人にとって重要なのは『どんなものが作られているのか』を把握することであり、実際の削除要請の数は本当に少ない。大半は比較的無害であり、むしろ彼らのビジネス全体にとって付加価値となっている場合も多い」と説明する。加えて、将来的にはアップロード前のブロックや収益化の可能性も検討していると示唆している。

ここ数年、YouTubeなどのプラットフォームはAI生成コンテンツへの対応に苦慮してきた。発端となったのは、実在アーティストを模倣したAI音声楽曲が大量に投稿されたことである。

AIディープフェイクは著名人だけでなく、一般の個人にとっても問題となっている。しかしハニフ氏によれば、世界中すべての人を類似検出機能の対象にすることは「おそらく」ロードマップには含まれていないという。もっとも、誰であっても苦情手続きを通じて削除を要請すること自体は可能である。

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