SLSのアップグレードをなくし、打ち上げ頻度を増やします

NASA、有人月面着陸は2028年に。アルテミス計画を大幅見直し

Munenori Taniguchi

Image:NASA

NASAは、大型ロケットSpace Launch System(SLS)のアップグレードをキャンセルし、さらに有人月面着陸探査の予定をアルテミス3号から4号に変更するなど、アルテミス計画に大幅な変更を加えたと発表した。

これまで、NASAは2028年に予定していたアルテミス3号で宇宙飛行士を月面に着陸させることを計画していた。その工程は、オリオン宇宙船をSLSで地球の軌道に打ち上げ、そこで別に打ち上げられた月着陸船に飛行士が乗り換えて月面へ向かう(復路はその逆)という、やや複雑なものだ。

新たな計画では、アルテミス3号は2027年に前倒しされる一方で、月面着陸は実施しない。地球低軌道に打ち上げたオリオン宇宙船と、それよりも先に軌道に打ち上げられて待ち受ける着陸船を用いて、ランデブー飛行~ドッキングの手順の実証、Axiom Spaceが開発する新型の宇宙服の試験などを行うという。これは、1969年初頭のアポロ9号ミッションに類似したものになる。

NASAは月面着陸機の開発にSpaceXのStarshipと、Blue OriginのBlue Moonを選定している。だが、改訂されたアルテミス3号ではこのうちのいずれか、または両方を打ち上げてオリオン宇宙船とドッキングさせ、生命維持装置、通信システム、推進システムの統合などのチェック、ドッキングした状態で行える一連の試験をこなしたいと述べている。

改訂後のアルテミス3号は、月着陸船の開発遅れによる計画全体の遅延を取り戻し、新たな有人月面探査となるアルテミス4号と5号を2028年内に実施することを目指すものとなる。

しかし、いまのところSpaceXのStarshipは、過去3年間で11回の試験飛行を実施しているものの、飛行士を搭乗させて月面着陸を実現するために必要になる技術的な目標をクリアするどころか、地球周回軌道にも到達できていない。Blue OriginのBlue Moon Mk.1月着陸船は、アルテミス5号での月面着陸船を目指して開発が進められていたこともあり、まだヒューストンにあるNASAジョンソン宇宙センターで模擬的な宇宙環境において熱平衡の維持など、任務遂行能力があることを確認するための試験が行われている段階だ。

アルテミス計画では、月面および月周回軌道に持続的に飛行士を滞在させることを目標のひとつに掲げている。しかし、NASAの航空宇宙安全諮問委員会(ASAP)の最近の報告書では、従来の計画のままではスケジュール面やミッションの安全性予測、民間に製造を委託している月面着陸船(HLS)の準備の進捗にまで疑問が投げかけられていた。特にアルテミス3号ミッションには「初」の付く技術が盛りだくさんであり、それが月着陸船に大きく依存するものであったため、「ミッションレベルで重大なリスク」があるとASAPは指摘している。

NASAのジャレッド・アイザックマン長官は、今回の計画変更において「SLSのように重要かつ複雑なロケットを3年ごとに打ち上げるのは成功への道ではない」「3年ごとの打ち上げでは(その間に)技術が衰えてしまう」と述べている。そしてより頻繁に打ち上げられるようになれば、NASAは当初計画されていたアルテミス3号での月面着陸に直行するのではなく、ミッションとミッションの間に技術的な改善を少しずつ加えていくことができるとした。これはASAPが指摘したことと一致する。

そしてNASAとしては「安全面に対する考慮」も含めて、アルテミス計画全体を大幅に見直すことで「可能な限り複雑さを減らし」「製造を加速し、ハードウェアを導入し、打ち上げ頻度を高め」ていくとした。SLSは、製造プロセスを効率化するために単一仕様化され(計画通りにいけば)同ロケットの打ち上げ頻度は現在の約3年に1度から10か月に1度にまで短縮されるとのことだ。

NASAは現在、アルテミス2号の打ち上げを準備中だが、水素やヘリウムガスの漏れにより、すでに2月と3月の打ち上げ可能期間を逃している。記事執筆時点では、次の打ち上げ可能期間は4月1日からとなる。

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