米国内には低コストスマホを作る設備がありません
アメリカ製主張のTrump Mobileスマホ、「おそらく中国製」になるとのうわさ

現アメリカ大統領のドナルド・トランプ氏が単独または共同オーナーとなっている、500を超える企業を管理するTrump Organizationは、6月16日に独自の携帯電話ブランドTrump Phoneの設立と、スマートフォン「T1 Phone」を発表した。
T1 Phoneは売り文句として「アメリカ製」であることを強調し、MAGA(Make America Great Again)の旗印に共鳴するトランプ氏の支持者層への訴求を狙った製品になっている。
だが、この「アメリカ製」という点については、発表当初から疑問のまなざしが集まることになった。というのも、米国内で販売されているスマートフォンの大半が国外で生産されているものであり、米国内には499ドルという手ごろな価格でスマートフォンを生産できる設備がないからだ。
IDCのアナリスト、フランシスコ・ジェロニモ氏は、T1はおそらく海外で製造された既存のスマートフォンをベースにしたものになるだろうと述べている。ジェロニモ氏いわく「スマートフォンは複雑な製品であるため、まず、彼らが自分たちでスマートフォン開発したり製造したりしているとは思えない」「スマートフォンは、オリジナルのイラストをプリントしたTシャツをちょっと作るとか、そのようなものではない」とのことだ。
そして、発表されたT1 Phoneについては「典型的なホワイトレーベル製品のようだ」と評した。ホワイトレーベルとは、わかりやすく言えばOEM用に製造されたスマートフォンのことだ。自社で生産ラインを持たない格安携帯電話会社などが、それを購入して独自にロゴマークを入れるなど、外装をアレンジしてオリジナル製品として販売する。Counterpoint Researchのアナリストも、同様の評価をT1 Phoneに下し「これの製品は、少なくとも最初はおそらく中国のメーカーによって生産される可能性が高い」とYahoo Financeに述べた。
また現在、米国内でおそらく唯一製造されているスマートフォンである、PurismのLiberty Phoneを開発したトッド・ウィーバー氏は、必要な部品調達から製造ラインまですべての生産体制を米国内で整えるのに何年もかかったと述べている。
もし、Trump Mobileがこれから米国内に生産設備を建設するとしても、発表で述べられた8月(資料によっては9月と書かれている場合もある)には到底間に合わない。また設備が間に合ったとしても、それを動かす労働力の確保と育成が必要になる。
ウィーバー氏は、CGレンダリングとみられるT1 Phoneの画像や、仕様などの情報を見たところ、このスマートフォンが中国Wingtech製の「Revvl 7」と呼ばれる製品をベースにしている可能性があると述べている。また一部では、スマートフォンデータベースサイトGSMArenaに掲載されているCoolPad 100と呼ばれるスマートフォンが、T1 Phoneの正体ではないかともうわさされている。
Trump Mobileの設立とT1 Phoneを発表した、トランプ大統領の息子でTrump Organizationの執行副社長であるエリック・トランプ氏は、保守系インフルエンサーのインタビューを受けた際、「最終的には、すべての携帯電話をアメリカ合衆国で製造できるだろう」と述べている。だが、それ以外では、Trump Mobileはこのスマートフォンがどこで生産されるのかについての問い合わせに回答していない。
ちなみに、このときエリック・トランプ氏が手にしていたスマートフォンは、Trump Mobileのウェブサイトに掲載されているT1 Phoneとは明らかに異なり、iPhone 16 Proを金色に塗ったものではないかと指摘されている。
トランプ大統領は以前より、アップルに対してiPhoneを米国内で製造するよう求めており、アップルが製造拠点を中国からインドなど他の国に移したことを批判、先月にはiPhoneに対して25%の輸入関税をかけるとまで述べた。
しかし、もし本当に米国内でiPhoneを作れば、その価格は最低でも3000ドル(約43万円)以上に跳ね上がってしまうことが予想されている。
- Source: Yahoo Finance
- via: Engadget