今年のiPhone 17 Airには間に合わない?

2027年のiPhone Air、低消費電力の「LTPO3」ディスプレイを初搭載か

多根清史

Image:Varga Jozsef Zoltan/Shutterstock.com

アップルは2027年に投入予定の超薄型「iPhone Air」モデルにおいて、従来よりも大幅に省電力な「LTPO3」OLED(有機EL)ディスプレイ技術を初めて採用する見通しだと報じられている。

韓国のエレクトロニクス業界誌『The Elec』によれば、この新技術は現在のLTPO(低温多結晶酸化物)OLEDディスプレイをさらに進化させたものであり、スイッチングトランジスタおよび駆動用トランジスタの両方に酸化物半導体を使用することで、特に低リフレッシュレート(常時表示モードの1Hzなど)時のバッテリー駆動時間を大幅に改善できるとされている。

iPhoneのディスプレイでは、個々のピクセルを制御するために数百万ものスイッチ、すなわちバックプレーンが組み込まれている。現行モデルでは、低消費電力だが応答が遅い酸化物半導体TFTと、高速だが電力消費が大きいLTPS(低温多結晶シリコン)TFTの2種類を組み合わせて使用している。

2024年の「iPhone 17」シリーズでは全モデルが現行のLTPO2ディスプレイを搭載し、このハイブリッド構成が引き継がれる見込みである。ただし、2027年モデルにおいては、消費電力の大きいスイッチをより効率的な酸化物トランジスタに置き換えることをアップルは計画しているという。

酸化物TFTは、リフレッシュレートが低い状況ではバッテリーの持続時間を著しく向上させる利点があるが、スイッチの応答速度が遅いため、高速描画やスクロール性能とのバランスをどう取るかが課題となる。

LTPO3は、こうした特性からも、特に内部スペースが限られた超薄型モデル「iPhone Air」にとって不可欠な技術と位置付けられている。Airモデルは大容量バッテリーを搭載する余地が少ないため、ディスプレイ側での省電力化が必須となる。一方で、筐体に余裕のあるiPhone Proシリーズでは、すぐには導入されない可能性が高い。

なお、アップルはすでにApple Watch Series 10のような小型ディスプレイにおいてLTPO3技術を採用しており、iPhoneクラスの大型ディスプレイへの応用も現実味を帯びている。

このLTPO3パネルも従来通り、サムスンディスプレイおよびLGディスプレイが製造を担当するとみられている。ただし、両社とも新たな製造設備への投資が求められており、特にLGに関しては生産体制の整備が急務とされる。アップルは2025年第3四半期までに最終的な技術採用の判断を下し、サプライヤー各社には量産に向けた準備期間として約2年を与える計画だという。

ディスプレイの世代交代が2027年以降とすれば、今年登場が見込まれる「iPhone 17 Air」には間に合わないことになる。同モデルに関しては、社内テストでも「充電なしで1日使えるユーザー」は全体の6~7割に留まるとの報道もあった。これが製品版でどこまで改善されるのか、気になるところだ。

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